カルダモン

メイド・イン・ホンコン/香港製造 デジタル・リマスター版のカルダモンのレビュー・感想・評価

4.1
早稲田松竹で前情報抜きに鑑賞しましたが、とても好みでした。演技力などでは到底太刀打ちできない瑞々しさ。
大人以前の、今にも散ってしまいそうな彼らの笑顔や泣き顔が忘れられない。

20年以上前の映画だが、まったく色彩を失わず瞬間が儚く美しい。これは単に4Kデジタルリマスターの力以上に、フィルムに焼き付けられた情念のようなものが宿っているからでしょう。
闇社会に片足を突っ込みながらも属することを拒否するチャウ、彼が面倒を見る知的障害者ロン、そして余命幾ばくも無い病に侵された女子高生のペイ。
この3人のアンサンブルがとにかく見ていて気持ちがよく、やたらと下ネタを繰り出す割りに不思議と爽やか。
これを見ていて、ふと岩井俊二の「PICNIC」を思い出した。世界の狭間で終末に向かう構図が、同時代の映画作品として重なる。

香港返還の前後がどのような空気であったのか想像することしかできないけれど、確実に変わってしまう巨大な「何か」を前にして、誰もが寄る辺なさを感じていたはず。年端もいかない微妙な世代が、漠然とした不安を振り払う姿に打たれた。