『パラレルマザーズ』からまだ二年ほどで新作かよ! アルモドバル元気だな! と思ったが本作『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』はランタイム31分の短編だったので、あぁやっぱ寄る年波には勝てないというかアルモドバルも長編はあと一本観られるかどうかくらいなのかなぁ、と切ない気持ちにはなった。ただまぁ本作の内容自体はアルモドバル的には珍しい西部劇というモチーフを取りながらも、わりといつも通りの感じだったので安心して面白く観られる作品ではありました。
内容的にはイーサン・ホーク演じる保安官とペドロ・パスカル演じる牧場主のドラマなんだけど二人はともに昔そこそこの悪事を働いていた友人同士で、その二人が20年ぶりくらいに再会するというお話です。保安官イーサンは最近町で起きた殺人事件を追っていてその犯人の目星も付いているのだが、その犯人というのはペドロ・パスカルの息子なのである。ペドロ・パスカルが久しぶりにイーサンに会いに来たというのも何とか息子を見逃してくれないか、と嘆願するためであった。さらにそこにアルモドバル的な要素としてイーサンとペドロ・パスカルはかつて同性愛的関係であったことも明かされる。果たしてイーサンはかつての関係性に情を感じてペドロ・パスカルの息子を見逃すのかどうか、というお話ですね。
短編とはいえその結末までは書かないが、本作は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』や『ブロークバック・マウンテン』へのアンサーってな感じであった。これは普通に長編で観たかったなぁと思いましたね。二人のドラマは凄い重厚なものであろうことはシーンの断片から窺い知れるのだが、いかんせん31分の作品なのでそこが実際に描かれることはない。想像力が刺激されてよいとも言えるかもしれないが、やっぱもっとガッツリ観たいとは思ってしまったな。深掘りできるだけの余白がある設定だとは思うので。
ただ、描写された範囲内でもラストの牧場の柵内で遊ぶお馬さんたちは凄く良かった。これはメインの二人のことを表してるんだろうけど、柵の中の管理された場所でもいいからずっと遊び合える関係でいられたら、その方が良かったのかもなとか思わされちゃいますね。アルモドバル的な性的描写といえばワインのシーンもエロくて、まだまだイケるなこの監督…と思いましたね。というわけでアルモドバルにはまだまだ撮ってほしいです。
あとイーサン・ホークはやっぱいい顔するなと思ったよ。31分の短編ではあるがそこそこには満足感があって良かったですね。これの120分バージョンを観たいとは思うが…。