岩嵜修平

GIFTの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

GIFT(2023年製作の映画)
3.8
『GIFT』上映+石橋英子ライブ・パフォーマンス
複製芸術たる映画を再現不可能な形で上映する試み。今までに世界で7回しか行われていない中での8回目。無声映画の活弁士ともまた違う、映像と字幕で設定と人物の背景と一部の台詞は理解出来ている中で、音楽が、その意味付けを変容させ得る体験。無二。

石橋英子×濱口竜介トークショーで、本作は山崎梓さんがメイン編集という話があったが、監督や石橋さんの意図から離れたからこその、序盤の薪割りシーンの長回しと唐突な外部の侵入、森での親子のかくれんぼからの唐突なおんぶなど、時間的・空間的な流れを無視したカットが新鮮。未来や過去の挿入も。

映画において、感情的、説明的な音楽は嫌われる傾向にあるが、今回の演奏はエモーショナルな箇所がありながらも、基本的には、展開というよりは映る対象の変化に合わせて変わっていった印象で、音楽によって何でもないシーンが感動的になったり、その逆も然りで、映画における音楽の大きさを実感した。

『悪は存在しない』予告編と今日の演奏を聴くに、メインテーマから想起したのは映画『メッセージ』でのマックス・リヒター「On the Nature of Daylight」だったのだが、後から聴いてみると似ておらず、設定(シングル親と子)や背景(善悪を超越した存在としての自然と宇宙)から連想されたものかも。
岩嵜修平

岩嵜修平