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ゴースト・トロピックのzhenli13のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.1
固定長回しの部屋がじわじわと明るくなっていく冒頭はアピチャッポンかと。一夜ものということでアケルマン『一晩中』も想起するものの、バス・ドゥヴォスは深夜にこそ浮かび上がる社会構造に焦点を当てている。とはいえ酷薄さよりも温かさが終始感じられるのは、スタンダードサイズ16ミリフィルムでの撮影と心地よい環境音とギターの音色によるところが大きいのだろう。おかげで中盤スヤァ…となってしまった。
時折『未知との遭遇』のような電子音がしてそれこそアピチャッポン的な不思議展開があるのかと思いきや、そういう感じではない。
とはいえ終盤、ホームレス男性から引き離されたロン毛の犬の綱が風にほどかれ、鮮やかな光を浴びながらロン毛が立体的に風に吹かれるシーンが前ぶれなく不思議で美しい。

終電を乗り過ごし、深夜の街をひたすら歩く小さな移民の女性。女性のことが心配になったコンビニの若い店員が車で送るシーンはつかの間のシスターフッドという感じでとても好い。男と徘徊する我が娘を見かけた女性は足早に車を降りて去るけど、若い店員の方が名残惜しそうにしているのも好い。

母の居ぬ間に恋人未満の男と深夜徘徊する娘は、母の長時間労働によって支えられて遊べることを意識していない。
でも彼女は明るい海に駆け込んでいく友人たちを真っ直ぐ見つめ、自分は水着にもならず海に入ることもない。
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