せの

ノスタルジア 4K修復版のせののレビュー・感想・評価

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)
4.0
4Kレストア版の1週間限定上映にて。

話はよく分からないので、映像的なところだけに触れると…

いやに幾何学的な配置の背景やらセットと、その中で不規則に配置されゆったりと動く登場人物たちとが作る美しい画面が延々と続きます。会話も動きもカメラも超ゆっくりなのでどうしても眠くなります。アンドレイの連れの女がヒステリックに喚いていても眠くなります。
しかし、その絵画のような造られたセットの中にも、奥行きが感じられる表現の仕方(たとえばアンドレイの宿の部屋は、初めは雨が降っており、窓の外の風景と奥の浴室(?)の陰影により、壁の向こうの作りが想像できるなど)が各所に見られますし、特に水の冷たさや温泉の温かさがこっちにも伝わるような音が素晴らしかったですね

過去の映像は暗く、色もないのですが陰影が濃く美しく、意味は分かりませんがずっと観ていられます。現在の映像はゆったりと時が流れるローマにひとり迷い込んでしまったようなもので、旅する映画でもあると言えます。

話の流れ
ロシアの詩人アンドレイは音楽家サスノフスキーがかつて訪れたというイタリアのトスカーナにやって来た。通訳のエウジュニアを連れて宿泊したホテルの近くに温泉があり、近隣に住むドメニコという男に出会う。エウジュニアは2人との関わりを嫌い、またアンドレイの煮え切らない態度に怒り、ローマへ行ってしまう。アンドレイはドメニコから、「世界の終末を避けるため、火をつけた蝋燭を持って温泉を歩いて渡れ」と使命を託される。

展開というほどのツイストはなく、淡々と、意味不明な回想を挟みながらアンドレイとエウジュニア、ドメニコの関係がじんわりと変化していきます。
突如、映画的盛り上がりを見せるのはドメニコの最後の演説からの焼身自殺。ここで盛大にかかる第九、おそらく劇中最も音量がデカいです。劇的な盛り上がりの後、アンドレイはコソコソ蝋燭を持って歩いて絶命。緩急のあるラストでした。
せの

せの