この映画を広島で観たことにそこはかとない巡り合わせを感じつつ、モヤモヤした部分と映画として出来の良い部分とでかなり揺さぶられました。
オッペンハイマーというタイトルの映画であるので、当然鑑賞前から原爆を生み出した事の功績とその業の重さを描いていくものだと思っていましたが、意外となんか法廷劇っぽくてびっくりしましたね。
劇中通しても、原爆を一度使えばその破壊力がそのまま抑止力になると強調していましたが、肝心の原爆投下の瞬間やその後の広島・長崎の映像が一切無いのは如何なものかと…オッペンハイマーが見ていないものは映らないように作っている気もしましたが、ストローズの独白の辺りとか、別に徹底してそうしているわけでも無さそうなので、原爆という常にセンシティブな題材を扱う以上、その破壊描写は避けて通れないと思います。
実際、自分も原爆の恐ろしさを軽視していたわけでなくとも、原爆資料館で本物の被曝資料を見る事で認識の甘さを痛感したわけですので、こういう映画でこそ、凄惨な原爆被害の実態を見せつけるべきだと思います。
大学での講義や、学者間での会話が浅いというか薄い気がします。これは字幕の問題もあるのかもしれませんが、会話の内容がどれもネットに転がっている量子力学の小ネタみたいなものばかりで、些か違和感がありました。インターステラーでも感じた部分ですが、リアリティが削がれる要因な気がします。
著名な学者がバンバン出てくるのでその辺りは楽しめます。
音が良かったです。IMAXで見るメリットは、今作では音にありますね。作風としては常に会話劇ですが、どんな場面にも常に音楽がガンガン鳴っているので、煩く感じない人には音響がいいスクリーンがオススメです。
フローレンス・ピューがとても良かったです。やり手な女性、だけど素直になれず自分を追い込んでしまう繊細なところもある。そんな人にアタックしながら人妻を孕ませて結婚し、なんだかんだ最後まで夫婦を続けるオッペンハイマーさんにはやられました。
彼の偉業もさておき、女関係のだらしない部分なども人間らしさとして描かれている点は良かったと思いますが…
反対した者がひとり…ジョン・F・ケネディですのくだりは蛇足でした
