みほみほ

この心亡き者のみほみほのレビュー・感想・評価

この心亡き者(2022年製作の映画)
4.0
🫀2024年60本目🫀(字幕)

タイトルの「この心亡き者」が何重にも効いてくるストーリーと、映像による惹き付けに強い満足感を得たので、昂る気持ちをそのままにここに来てみたら…低評価の嵐に驚きを隠せない。

賛否両論とかではなく、否の比率高過ぎて切ない… まぁピンチを自ら作りに行って絶望する後半だったり、警察内の人員不足だかなんだか…明らかに力で劣るペアに不安を感じたりと色々思うところはあるけど、それ以上に雰囲気が良過ぎて飲み込まれちゃったんだよね。

どんな名作でも最初は入れないと思う瞬間がある場合が多いけど、本作は最初から最後まで引き寄せる力があった。犯人が分かってから失速する感じはあるが、素人でも疑うレベルの犯人から意表を突かれたのが素直に気持ち良かった。(動機が身勝手で腹立たしいけども…)

配偶者の自殺に対する疑問からもやもやポイントに火がついてる方も多そうだけど、作中言及があるように鬱病というワードをチラつかせてるのだし、そこは想像力というか なんというか…目の前にどんな幸せがあろうとも 悲劇が起こってしまうやるせなさが現実にもあるわけで、それは誰にもどうしようも出来ない悲しみで、女刑事の抱える苦しい記憶としての深すぎる重みを感じたんだけどなぁ…。(こんなにボロクソ書かれる映画じゃないはずなのに、多くの人を落胆させるのが犯人の動機とか登場人物のイライラ行動なのかな…)

今はこの作品の気分じゃないと思ったはずなのに、観始めたらこの世界観に惹き込まれちゃって、映像の見せ方も凝ってて完成度が高い。作品としての完璧さに魅了されていたので、ここでのスコアはある意味衝撃的でした。

犯人の感じとか警察から韓国映画を感じる瞬間もあるんだけど、台湾の滑らかさというかそこまで狡猾に見えない柔軟性があって、韓国映画とはまた違う質感が好きでした。韓国でリメイクするなら、犯人役はイ・ソンミンに演じて欲しいし、日本なら石橋凌でお願いしたい!!

この作品の佇まいの中に、"悲しみ"が強くあるんだけど、その奥から愛とか憎悪、執着が見えてくるのが見事で感情をじわじわと引き出された感じがした。

同じアジア人でも国によって色が全然違うのも面白いけど、昭和の日本のコテコテな要素を煮詰めたような生々しい世界と、日本にはあまり馴染みのない移民の不法就労問題から見える現実などが意外としっかり描かれていて良かったし、お金の怖さも同時に感じた。(裏社会の人を通じて潜ってる人は多いとは思うけど、一般層に浸透はしてないしね)

連続殺人鬼的な人達って、元々サイコな場合は除き、自分のトラウマを重ねてその復讐を関係ない人達で晴らしてる傾向高めなの何故…元凶となった人物は行方知れずかお咎めなしかみたいな…
イジメからの復讐みたいな場合もそうだけど、やった人に向かずに矛先が変わってしまうのが人間の不思議。なんか色々考えたくなる映画でした。
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