紅桜とか、HIPHOPとかに、そこまで興味ない感じの人がカメラ回してるっぽいのが、ドキュメンタリーとしては功奏している。
いい感じの距離感で、被写体に入れ込みすぎず傍観していた。冷酷なまでに目の前の事実を切り抜いてしまう映像媒体本来の性質によって、社会不適合のアウトローの眉を潜めるような実情を見せられるのかと思いきや、アングララッパーの世界に生きる男のダメっぷりの度が過ぎるせいで、むしろ逆に奴らの愛すべき生態を浮かび上がらせる効果をあげている。
紅桜氏は、まあ、厄介な奴ではある。出所の日は、奥さんと仲間が出迎えて、やっとうちの寅さんが帰ってきた！みたいな雰囲気がいい感じではあるけれど、今日の日本はそういうのが通用するような、ゆとりある社会じゃあない。
出所の祝いに集まった男どもがワイワイやってるなかに入り、ビールを開けながら調子よく笑う夫を見て、呆れて泣きそうになる奥さんの顔に気づいたら、もう居たたまれなくなった。
あの感じのグループに属してたら、薬物なんか絶てるワケないもんね。みんな、パクられたことに関しては「運なかったね」くらいのノリでいるのが、もう答えなワケで…。
出所後、暴力とシャブが当たり前にある環境で育った生い立ちも本人の口から語られる。これを聞くと同情的にはなれるのだけれど、今でもあんま悪いこととは思ってないっぽい喋り方なもんだから、やっぱフツーの感覚じゃねんだな…、と。苦心談以上・武勇伝未満みたいな口ぶりに面食らう。
本人は真顔で真剣に喋るため、ありがちな不良のワル自慢にはきこえないから好感は持てるんだけど、取材だからってこの生い立ちを包み隠さな過ぎるのもやっぱオカシイんすわ。
彼にとっての世界ってのはそういうものなんだと、こちら側の常識に当てはめちゃダメっぽい。R-指定が言った「ピュア」ってのが、すごく的確に紅桜という人間をあらわしていると思った。
薬物で服役したダメな奴ではありますが、仲間に対しては律儀で義理堅く、不器用ながらも妻と子供たちへの償いをしようとし、貧しいながらも愛する郷土に生きる人間臭さがとても魅力的。
家族や仲間への思いを歌にのせるライブシーンに引き込まれました。津山のゴロツキも、マイクを握れば風雲児。MC紅桜のステージをご覧あれ。アングラHIPHOPシーン疎い僕にも、逮捕で全部おじゃんとか、ほんと勿体ないことしたなぁたと、そう思わせるくらいのファンクです。
多分、真っ当な職業とかできなくて、音楽しか道がないタイプの人。間違っても社会に出てこないように、音楽でなんとか食えるようになってほしい。

2024/03/24鑑賞。

岡山県津山市出身のラッパー、紅桜の再起を追うドキュメンタリー。
TBS制作のドキュメンタリー番組が、「TBSドキュメンタリー映画祭2024」にて映画化。

テレビ放送版はうろ覚えだが、津山の情報とか、地元エピソードとか、
インタビューの内容あたりが追加されている？

テレビ版のさらにその先、
HOPE出演やアルバムリリースへのレコーディングなどまで描かれている。
何よりエンディングを紅桜の曲でちゃんと締めてることで、映画として綺麗になってると思う。
テレビ放送版はジャパマゲの「最後の一本」で、
この内容で締めの曲これ？って驚いた記憶があったので...。


紅桜のピュアな人間性がダイレクトに伝わってくる。
それは、
タクシーで子どもの話を聞くシーン、
獄中からの手紙の字について「手紙しかないから字でしか誠意が伝わらん」と思って字を練習したり、
などピュアでかっこいいなと思う部分と、
覚醒剤を使った理由が、
「兄貴はどんな気持ちだったんやろう」
「やってみんと分からん」
だったことなど、ピュアさが故の危うさを同居させている。

文章で切り取ると、理由がすごく短絡的に見えるけど、そこに至るまでの兄への苦悩や葛藤があってのことだろうなというのは、
「憧れの兄貴を殴り飛ばした」と語る彼の語り口から容易に想像できた。

語られていた通り、兄が覚醒剤で堕ちたことで、誰よりも覚醒剤を憎んでいたし、
仲間が覚醒剤をすると一番怒っていたのも彼であったとのこと。
彼自身、使用に至るまでに覚醒剤によって人生を狂わされた人間の1人だということが分かる。

そして自分が手を染めたことで、周りの色んな人を心配させて迷惑をかけてしまうことになる。
「人の気持ちが分かる奴」だからこそ辛いだろうな。


紅桜のラップは本当に唯一無二。
本当にあの声は最高やと思う。











子どもに「これ薬。危ないやつ」って教えるのめちゃくちゃ面白かった。


いつも行く映画館が、プレイヤーやヘッズみたいな風貌の人たちでいっぱいになってて、
雰囲気が違いすぎてめちゃくちゃ面白かった。

岡山のラッパー「紅桜」の破天荒な人生に密着したドキュメンタリーです。
彼の唯一無二のflowとハチャメチャなサグライフはHIPHOP好きじゃなくとも楽しめると思います。