スワヒリ亭こゆう

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターのスワヒリ亭こゆうのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

デジタルリマスター版で公開されたので映画館へ。
久しぶりに本作を観たのですが、改めて凄い映画だなぁと思います。
本作は女性で初めてカンヌ映画祭パルムドールを受賞した作品です。ジェーン・カンピオン監督はニュージーランド出身で本作の舞台にもなっています。

何年かぶりに本作を観たんです。ストーリーもうる覚えで再観賞するには新鮮で観れるかと思っていましたが、映画が始まると思い出しました。それだけ素晴らしい作品だという事だと思います。かなりセンセーショナルな作品でした。


⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️

⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️

⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️
僕は映画のストーリーに関しては監督が神様で良いと思うんです。監督の意向が1番尊重されなくてはならない。撮影現場で監督が横暴な態度を取ったり、パワハラやセクハラ、モラハラなんかは言語道断で絶対にダメだと思うんです。
ただ、こういう映画を撮るんだ!っていう意思はあった方が良いと思います。
で、本作のストーリーなんですが現在でも素晴らしいです。いや少し違うかもしれないです。僕は女心を理解しているとは自分でも思えないので想像でしかない。それでも感じれる何かが本作にはあります。

ジェーン・カンピオン監督は女性です。
本作のストーリーは女性が虐げられ物のように扱われ、親に結婚相手を勝手に決められ嫁がされる女性が描かれています。【女性らしく】が禁句になりつつある現代。本作では【女性らしく】生きる事すら出来なかった女性の話です。

ニュージーランドの映像はとても美しいが暗くて鬱蒼と生い茂る沼地の森。グレーの映像に流れるキレイなピアノの旋律がどちらも印象的な作品です。
そしてホリー・ハンター演じるエイダ。
彼女が美人なのは勿論ですが、言葉を話さない。それはエイダの意思がそうさせている。
言葉を話さない事で意思の強さを表現していると思いました。
エイダには娘がいる。その娘フローラ役のアンナ・パキンとホリー・ハンターは共に本作でオスカーを獲得しています。アンナ・パキンに至ってはテイタム・オニールに次ぐ若さでの受賞だったみたいです。

本作のタイトルにもあるピアノ。
エイダは元々自分の物だったピアノを旦那に勝手に村の男・ベインズ(ハーヴェイ・カイテル)に土地と交換されてしまうんです。更にベインズの要求はエイダによるピアノレッスンなんです。
エイダのピアノを弾く姿に惹かれ、レッスンを要求する。が、ベインズはピアノを弾こうとしない。
ピアノを弾くエイダに黒鍵の数だけ言うことを聞けばピアノを返すと約束するんです。
この契約が観客の本作への評価の境界線の様な気がします。
契約は予想通りエロチックな描写になっていきました。
最初からエロチックではなくてレッスンの度に過激に。
ベインズがエイダの身体を求め応じるエイダ。
契約から始まった関係が愛に変わっていく。
ここがポイントです。この女心は難しいです。
男女という性別で語らないといけないシーンでもありますね。
ハーヴェイ・カイテルの色気はどちらかと言うと同性に支持される気がします。勿論,『レザボア・ドッグス』『スモーク』などが好きな女性も沢山いてファンもいると思いますけど。
でも、本作のベインズをエイダが愛するのはSEXで変化したのは間違いないでしょう。
快楽などは男性的な意見過ぎる。『ピアノ・レッスン』のタイトルにある様にレッスンの時にベインズはエイダに対して優しく紳士に、そして時にエロチックに接している。
エイダがニュージーランドにやって来て夫のスチュアート(サム・ニール)と反りが合わず、ニュージーランドで心を許せる相手は娘だけだった。そんな時にベインズに抱かれてSEXの快楽もあるけど、優しさや人の温もりみたいなものを感じる相手が初めて出来た。そこにエイダがベインズを愛するキッカケになっていくのかな?って思いました。これが僕の出した本作の感想です。

そう解釈するとその後の二人の運命が切ない愛の物語として素晴らしい作品になったと思います。
映像、音楽、そしてストーリーの美しさが素晴らしくセンセーショナルで釘付けになる作品だと思います。
女性が虐げられていた時代に自分の愛に生きる。その過酷な運命の物語。脚本が素晴らしいですね。
善悪は単純だけど愛は難しい。見事です!