きねぼっち

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト デジタルリマスター版のきねぼっちのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ストーリーはもひとつだけど、ジャンキーの妙に緻密な描写やハーヴェイ・カイテルの狂乱演技が面白かった!
あと映像も結構イイよね~

にしても、これカトリック教会から文句来なかったのだろうか?
ラスト、尼僧レイプ犯に許しを与えて無罪放免にした結果、賞金をとりっぱぐれた主人公は野球賭博の元締めに処刑される。
つまり、最終的に彼は人類の原罪、すなわち他人の罪をあがなうために死んだキリストと等しい存在となるわけです。序盤で、彼が全裸でキリストが十字架にかけられるポーズになってるシーンもあったし。

まあでも、そこに至るまでにヨレヨレになり、ラリってケモノのように嗚咽するカイテルのあまりにも衝撃的な醜態によって強引に納得させられるというのはある。

ほんとに本作のカイテルはすさまじく、最低のヨゴレ役といっても過言ではないと思う。
本作主人公はやることなすこと悪行三昧ではあるが、スケールがみみっちく、しかもその過程をねっちり描写するから、呆れを通り越して意表を突いた笑いに変貌。

レイプされた若い尼僧のヌードを覗き見したり、夜遊び少女を恫喝、エッチなポーズさせてゴソゴソとハーヴェイならぬセン○リ・カイテルが出現するのホントになんなん???
野球賭博するにも、仲間に妙なハッタリかましてたりして、謎の策略を仕組んでいたな・・・あとコイツ、全然仕事してないよな。

キリストの幻覚を見た主人公は悪いことがやめられない弱い自分を助けてくれよ! と本音を吐露、そこで本作のテーマが明瞭になって、主人公がわざとセコく設定されていると勝手に納得。

製作者サイドがジャンキーであり、本作後、ドラッグにはまりすぎてあまり活動ができなかったり、早世した人もいることを考えると、なんとも切ない願いな気もするかな・・・しかし、主人公にドラッグを与える役のゾー・ルンドはヘロインを素晴らしいものと崇めていたという話を見たことがあるような気もするので、本作の世界観はジャンキーとキリストの間で揺れる主人公という図式もあてはめることもできるかもしれない。

また、キマったジャンキーのおかしな行動は非合理的に見えるが、実は人間の食事などの活動は最終的に脳内の快楽物質を得ることと考えると、彼らは究極の合理主義者との解釈も可能な気もする。

それはいいとして、やっぱりストーリーがグダっていると思う!
冒頭から尼僧レイプ事件が発生、どっぷり主人公が関わるようにしないと、バクチで借金まみれの主人公が賞金ゲットで人生逆転ホームランを目指すという目的がアピールできない。返せない借金もすでにできてる設定にしておいたほうが、話も早くていいよね。

その点がちょっと気になったけど、個人的には人を選ぶけど名作だと地味に感動!!!
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