きねぼっち

オッペンハイマーのきねぼっちのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ロスアラモスで見た!
作中で実験成功したシーンで観客のスタオベすごかったし、アジア人が混じってるとか言われてリンチされそうになるしで、鮮烈な映画体験でした!!
って、ウソです!!!

寒いギャグはいいとして、マジメな題材のわりに面白かったかな~。
ダイナミックな構図に短めショットに加えてスターの演技力だから、常に注意を引き付けられてしまい、三時間を退屈させないのはすさまじいテクでビックリ!
絵的にも彩度の異なるカラー、モノクロなどを使い分けたりなどの工夫がよかったかな。

でも、映画としての完成度は高いけど、ストローズのモノクロパートっていりゅ~???
レイ○スト疑惑のあるダウニーがキライとかじゃなくて、オッペンハイマーの伝記ということなら、カラーパートだけで完結しているのでは?

ストローズのパートって、偉大なオッペンハイマー誹謗中傷したのは、チンケな小者だったんですよ! 天才の足を引っ張る凡人ってサイアクですよね!! だからコイツは失脚してざまあみろでしょ!!! ねえ、みなさん? みたいな押しつけがましい安っぽい勧善懲悪っぽさがあって、エンタメとして成立させようとする監督の配慮がすみずみまで行き届いているのには感心するけど、どうせ内容は悲劇だしそもそも小難しいつくりにしてるんだから、そこまでワイのようなアホの低みに降りてこなくてもいいっすよ、みたいな複雑な気持ちになるよな。

それにしても、映画の時系列をいじり、最初はワケわからんのが途中であっそーゆーこと? とアハ体験させる作風はいいけど、それだとやっぱり序盤は意味不明で空虚な時間だったし、結局ロスアラモスで原爆作る部分がメインストーリーなので、本作のような構成ならわざわざ時系列いじりする必然性は、実はなかったのでは?

メメントみたいにフツーのストーリーを一変させるためにいじるならいいけど、作風だからって感じで義務的にいじられてもな~。時系列いじりはパルプフィクションがメジャーにしたわけで、ノーランの発明でもないし、すでにオッペンハイマーの人生が面白いからいらんよな。

それから、意味深なシーンはいろいろあったけど、大半意味不明だった。リンゴに青酸カリってチューリングの自殺方法だったような気もするが、結局なんだったんだ・・・
それに、アインシュタインがその辺をうろうろしてたけど、あれは実際にあったことなん?
さらに、バガヴァッド・ギーター出すならクリシュナがアルジュナを説得するお話ですとの解説も出さないと意味なくない? せっかく愛人とファックしつつ読むんだから、時間的にも余裕あったような気がしたが・・・つまりファックシーンをもっとロング、ワイルド、ホット、ナスティ~にしたほうが良いということである・・・

とはいえ、やっぱり実験成功シーンはほんとに迫力あってすごかったな!
無音からの遅れてくる爆音でまんまとびっくりさせられて失禁寸前!!

あとやっぱり役者がよかった! マット・デイモンはもうけ役だね。
フローレンス・ピューの生々しい裸体には拙者の愚息も思わずピュ~って超下品!
しょせん男はつやつやテカってる美人のオッパイハンマーを見たら、その作品を傑作と言わずにはおれない哀れなオッペンハイマーなんですよ!!

余談。

それにしても、オッペンハイマー礼賛だけでなく、グローヴスやトルーマンにストローズを通して、彼の幼稚なナイーブさや虚栄心にとらわれたお調子者という一面を喝破していて、ノーラン監督の多角的なストーリー構築には脱帽。
オッピーって良くも悪くも俗物なんだ、っていう解釈なんだろうね。
出世したいから自己中にもなるし、兵器を作ってしまえば罪悪感を抱くというね。

さらに仲間であるはずの科学者からはハト派、タカ派両方から嫌われてしまうし、家庭も崩壊している。
絶望的に孤独なはずなんだけど、オッピー意外とポジティブなKYで、あんまり自分の不幸がわかってなさそうでちょっと失笑。

しかし、オッピーは原爆は世界を壊す、みたいに苦悩してたけど、それって別に核兵器が特別ってわけでもないよな。作中でも言及されてたノーベルや毒ガス開発した連中だって、当時としては未曽有の大量破壊兵器を開発してるし。で、いまだに世界は滅びていないし。

この辺のやたらと自分の所業がセカイを壊す、みたいな誇大妄想、自意識過剰ってのは、やっぱりいま現在天下を取っているUSAの繁栄が核兵器によって成り立ってきたからで、本作はその原罪を暴いているともいえるかな。
つまり、人間に対して核攻撃をした国はUSAだけで、もしUSAが覇権を失ったとき、その罪を裁かれる可能性は高い。
また同時に、核兵器に続いてもう一つUSAは罪を犯そうとしているかもしれず、AI兵器がそれ。

そういえば、オッピーが核を使えばその威力で世界は戦争をやめる、みたいな思考、ウォッチメンというアメコミ映画を想起。
で、本作の軍人たちのマッドな感じ、人的損耗を減らしたいっていうより、ウォッチメンのコメディアンが仲間に言い放った、楽しいんだろ?人を殴るのがよ、っていうのに近いと思った!

だいたいオッピーが悩まなくても、すでに米軍は総力戦だからっていうのを言い訳にして東京やドレスデンなどを無差別爆撃をしていたから、原爆投下は必然だったんだよな~。
そのわりに被爆者に対するオッピーの悔悟はけっこう踏み込んで描写されていたような気がするかな。

まーココだけの話、USAの態度がドイヒーとかいう以前に当時の指導者層がやらかしすぎだし、その後の責任者も自国で裁けてないし、それでなんか言っても虚無感しかないな、と異様に冷淡なのは実は枢軸国が勝利した世界線から来てるからなんで、気を悪くしたら申し訳ありませんね。
アッチの世界では旧ナチスが旧ソ連に核兵器使ってました!
って、ウソです!
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