このレビューはネタバレを含みます
寡作であることや本作のやたらと丁寧な展開から察せられる、監督の超マイペースぶりに感服！
あと、作品のいろんな部分に複数の意味を重ねたり、含みを持たせるテクがズバ抜けてて、それが監督の本領なんだな、と勝手に了解！！
つまり、「ミツバチ～」の精妙な隠喩は監督の才能あってこそ誕生できた作品であり、逆にその必要がない作品は「エル～」のように映像は美しいが割とフツーの内容におさまってしまうということではなかろうか。
それから、ストーリー的にサスペンスやミステリーになるはずなのに、展開が丁寧すぎてて、ぜんぜん緊迫感がなくてズコー。
よくよく考えたら、老境の映画監督が人生を振り返るという内容だけど、観客の興味を引き付けている部分は失踪した俳優が発見されるか否か？ 失踪の理由は何か？ 見つかった俳優はどうなるのか？ と言う部分であって、映画監督には別にいなくてもいいキャラ！
だから、彼の近況やら行動が描写される部分はなくても話は成立するのではないかと勝手に愚考。
しかも、興味を引き付ける部分の、失踪理由とか俳優の今後などには一切答えていないラストなのも、すごい度胸。
エリセ監督って、一生を通じて、自分のやりたいことしかやってない感じがとてつもないな！
とはいえ、劇中映画と本作の失踪俳優の父と娘との邂逅エピソードを重ねたり、作中の映画監督とエリセ監督がダブって見えるような作りだったり、劇中映画の内容が序盤とラストで判明という構成など、良くここまで考えるね、と正直脱帽。
ただ、過去作のセルフパロディをけっこうぞんざいにやっちゃってるかな、と言う気もした！
ミツバチ～の神秘的なラストを、本作では結局、精霊の声は聞こえなかったね、的なシニカルな展開にしてしまっていてガクーッ！
あのラストかなり感動したんですけど・・・
まーでも、やたらと長くてウンザリしたけど、かと言ってスカスカというわけでもない、評価に困る作品でした！
余談。
描写されてないことを言っても詮無いことだけど、俳優の失踪理由って、共演したあのアジア系の女の子と恋愛トラブルとかっぽいよね。
あと、本作のマイク監督は失踪俳優に過去、つまり娘の存在を思い出させようと懸命になるけど、映画の娘役と失踪俳優がカメラを見つめるショットは、撮影したエリセ監督を見つめているかのようにも思われて、エリセ監督の「娘」に対する想いの強さ、またアナ・トレントが本作の娘役など、いろいろ想像ができる余地があるのが面白い！
俳優のコートを監督が着たりとか、ヤヌス像など、彼らは二人で一人なのかも、という発想もできるかな。この辺まで来ると、エリセ監督のイメージ戦略にハメられてる気もしないでもない！
