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スターリンへの贈り物のKSatのレビュー・感想・評価

スターリンへの贈り物(2008年製作の映画)
4.2
画質も悪いし、カザフ語の台詞にロシア語のボイスオーバーが被さる仕様でイライラするし、途中で観るのをやめようかと本気で思ったが、我慢して最後まで観たら泣いてしまった、、、

スターリン時代のカザフのド田舎で、列車の中で唯一の肉親だった祖父を失い、逃げてきたユダヤ人の少年。彼はそこで、カザフ人の鉄道員の老人カシムに育てられることになり、周囲に暮らすポーランド人の医師やロシア人の元孤児だった美女、そして、様々なルーツを持つ悪ガキたちとも交流をもつことになる。

そこは、ソ連社会における少数民族や反体制派と見なされた者たちが強制移住されて暮らすコミュニティ。彼らは、言葉や宗教の違いを超えて何とか生きていたが、彼らを取り巻く状況は変わってゆく。

どこまでも広がるカザフのステップ地帯の風景も圧巻だが、カシムのキャラクターが本当に良い。年寄りではあるが、元軍人なのか、物怖じせず堂々としていて、それでいて優しい様は、非常に普遍的な「おじいちゃん」の姿といえる。対して子供たちの無邪気の一言だけでは片付けられない凶暴さも、怖くなってくる。

「スターリンへの贈り物」というタイトルの意味が判る結末は、ちょっと言葉にできない。とりあえず、ロシア人はドイツ人がやってきたホロコーストを非難する資格などないのではなかろうか。
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