耶馬英彦

戦雲 いくさふむの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)
4.0
 三上智恵監督の沖縄に関する作品は、東京ではたいていポレポレ東中野で上映されている。いずれの映画も、理屈よりも住民の気持ちに寄り添った作品で、全国ロードショーとまではいかなくても、もう少し話題になっていい。単館上映ではもったいないほど、たくさんの人々の協力で出来上がっている。本作品もポレポレ東中野で鑑賞した。例によって観客は年配ばかりだった。

 小泉純一郎以降の自民党総裁が首相を務める日本政府が、国民を助ける政策を少しも実施せず、むしろ国民を困らせる迷惑な政策ばかりを実施していることには、もう慣れてしまった。
 民主党が政権交代を果たしたときの鳩山由紀夫政権のときだけが、唯一まともで、沖縄の米軍基地について「最低でも県外」と、総理大臣としてはじめて普通のことを主張した。するとアメリカと日本の検察によって辞任に追い込まれた。
 日本とアメリカの利権が一致しているのが沖縄の基地開発だから、反対するなんてとんでもないという訳だ。総理大臣が自ら主張しても潰されるくらいだから、一般人の反対運動など、蚊ほどの影響力もない。
 反対運動はボランティアなのに対して、弾圧する側は仕事でやっている。罵声を浴びせられようと、権力は自分たちの側にある。ちょっとでも手を出してきたらすかさず逮捕して、有罪判決を下して刑務所に入れればいい。

 長いこと続いた自民党の傀儡政権のおかげで、日本の自治独立は完全に骨抜きにされてしまい、アメリカの言いなりの政治家だけが政権を担っている。民主主義者よりも国家主義者が圧倒的に多い。ロシアに似ている。ロシアの大統領選挙は、投開票で明らかに不正が行なわれていて、日本でも同じような不正がないとは言えない。まさかそこまでしないだろうというのが普通の感覚だが、まさかのことが起きる時代である。
 万が一、日本の選挙が公正に行なわれているとすれば、日本の有権者は、民主主義よりも国家主義の政治を望んでいるということになる。不正選挙よりも、そちらのほうがずっとあり得ない気がするが、まさかの時代だ。再び戦争に突き進みたい有権者が多数を占めている可能性も、ゼロではない。
 
 日米合同委員会という組織をご存知だろうか。メンバーは主に日本政府高官と米軍と米大使で構成されている。アメリカの意向を伝える場である。議事録が非公開のブラックな組織で、この組織が日本の政治を牛耳っていると、れいわ新選組の山本太郎が国会で指摘したことがある。しかしマスコミが取り上げなかったから、この組織のことを知る人は少ない。マスコミも牛耳られているという訳だ。
 鳩山由紀夫が違法行為でもないことで総理大臣を辞任したのに対し、モリカケサクラでおなじみの脱法の宰相は、平然と総理大臣に居座り続けた。アメリカの後ろ盾はそれほど大きいということだ。アメリカのポチでなければ政権を維持できないのである。

 次の選挙で岸田文雄や菅義偉が落選して、自民党が下野しない限り、日本が戦争に突き進むのは止められない。それも、一度や二度の政権交代では日本の政治が変わることはない。政権が交代しても、事務方と呼ばれる官僚たちが同じだからである。民主党政権時代、アメリカが政権を支持しなかったから、官僚たちはすぐに自民党政権に戻ると確信して、政権に非協力的だった。

 アメリカに堂々と異論を唱えることができる総理大臣が選挙で選ばれ続けない限り、日本に未来はない。日本の有権者にそれだけの覚悟があるかというと、あやしいものだ。
耶馬英彦

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