きざにいちゃん

オーメン:ザ・ファーストのきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
3.9
76年制作『オーメン』の前日譚で、悪魔の子ダミアンの誕生秘話を描く作品。

凶々しく邪悪で不気味な初代オーメンのダークワールドの秘密を、その色合いを継承して丁寧に作り上げた印象。なかなかのものである。

この手の映画になると、やたら「ジャンプスケア」を減点要素のように指摘する意見が散見されるが、ホラーなんだからそんなのは過剰演出でない限り、あって当たり前だと思っている。
そこはあまり重要ではない。
それよりも怖さを歯噛みし、腹筋に力を入れて集中してしまうようなシーンが多かった。
恐怖映画としては秀作である証左では無いかと思う。

『オーメン』がホラー作品として優れているのは、キリスト教悪魔崇拝のホラーフィクションと現実にある(と言われている)それの間(あわい)をリアリティ豊かに間接的に描く巧みさである。
直接的に邪悪で恐ろしいクリチャーを描くB級ホラーと誇り高く一線を画す、抑制された恐怖演出である。(B級にはB級の良さがあるが…)
例えていえば、サメをあまり登場させずにサメの恐怖を描いたスピルバーグの『ジョーズ』のもつ恐怖に近いかもしれない。

その点でいえは、今作はなかなかの力作と言っていい。今日的な斬新さは無いかもしれないが、燻銀のような伝統美の味わいがあるというか…
ただ、リアリティという視点で言えば、悪魔の子の受胎や誕生シーンにおける血と肉の生々しい描写は、個人的には少し苦手だったが…

この続きは『オーメン』一作目に戻ってしまうので、次回作はもうないのかもしれないが、何かまた関連作品が企画されると嬉しい。