きざにいちゃん

愛しきソナのきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

愛しきソナ(2009年製作の映画)
4.0
『ディア・ピョンヤン』に次ぐヤン・ヨンヒ監督の北朝鮮ドキュメンタリー二作目。

『ディア・ピョンヤン』の続編かつスピンオフ的な作品で、同作に登場した、平壌で暮らすヤン監督の姪っ子ソナちゃんの幼少期3才から13才まで(それ以降は監督が北朝鮮行きを禁じられたので映像はないがラストは大学進学まで)の成長を通して北朝鮮と日本で別れて暮らす家族を追う。

日本からの仕送りのあるこの家族は、平均的な北朝鮮国民より遥かに裕福だが、それでも外貨ショップの鍵付きガラスケースの向こうに陳列された「カルビーのポテトチップス」が高価で手が届かないのが北朝鮮の実情。
幼いソナちゃんが学校教育で教えられる「元帥様」「将軍様」を讃える歌を歌い、踊る姿が胸に迫る。

ヤン・ヨンヒ監督の北朝鮮ドキュメンタリー三作品中、個人的にはこの作品がいちばん刺さったかもしれない。抑圧してきた気持ちの滲み出しを描く大人が主人公の作品も素晴らしいが、無垢な子供の姿は切なさを倍増させる。10年に渡る子供の成長からは、視覚的にも時の経過を鮮明に感じる。子供の成長に対して、あの国のなんと変わらないことか…

ふと日本の国民的テレビドラマ『北の国から』を思い出した。20年以上に渡ってフィクションながらリアルに俳優たちの成長を追う名作ドラマだ。
ヤン監督の三作品も長い時をかけてリアルに家族を記録するドキュメンタリー。文字通り、もうひとつの『北の国から』である。