きざにいちゃん

ゴールデンカムイのきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
3.5
この作品自身のレビューから少しそれるが…

『キングダム』と制作背景が似ており、主役も同じ山崎賢人ということから、原作漫画があり、そのアニメが既にある人気作品をさらに実写映画化する意義を考えてしまった。

興行的成功確率が高いというのが一番の理由なのは間違い無いだろう。映画はビジネスだから収益を目論むのは当然だが手放しで歓迎できない。
実写映画で初めてこの作品に触れるという客層はいるだろうから、蛇足のような地上波連ドラの劇場版よりはまだ映画文化への貢献という点で意義はあるように思う。が、原作やアニメの「実写再現度」が話題になるようではもはや創作とは言えず「焼き直し」だ。
原作漫画のコマ割りを忠実にカメラアングルで再現する監督もいるが、個人的にはそれはもはや映画ではない。
かつて干されることを覚悟でテレビドラマの劇場版に疑問を呈した妻夫木聡に映画俳優としての気骨を感じたのだが、俳優陣はこの風潮をどう感じているのだろうか。日本映画界は何を思うのだろうか…

ともあれ、今作。
自分自身は原作未読でアニメを観て、面白い作品だと思った。
実写映画の制作陣の努力は認めるが、アニメを超えるものはなかった。
野生動物のCG化、特に熊との闘いの描写を高く評価する人が多く、作り手もそこに拘ったと聞く。
しかし、熊は、イニャリトゥ監督、デカプリオ主演の『レヴェナント』という遥かな名作が既にある。同作に比べれば大きく見劣りしてしまう、というのが率直な感想だ。

「予算が全然違う」「あれと比べること自体がナンセンス」というのであれば、作り手の映画人としての気概を疑う。
スピルバーグがJAWSを撮った時はもっと予算がなかったはずである。その中で懸命に考え抜き、鮫を直接描かないことで、それを上回る恐怖を見事に描き出して名作を残したのである。料理と同じで高くて美味いのは当たり前。いかに安く美味いものを提供できるかがプロだろう。

そんなこんなでモヤモヤする作品だった。