Jun55

Merry Christmas(原題)のJun55のネタバレレビュー・内容・結末

Merry Christmas(原題)(2024年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

自主上映で鑑賞。
監督が「Andhadhun」のSriram Raghavanということが鑑賞のモチベーションとしては大きい。
「Andhadhun」については、残念ながら、未だ観る機会がないのだが、2018年公開で当時、Filmfare等の多くの映画賞を受賞した伝説的な作品。
「Merry Christmas」はそれ以来(6年ぶり)の監督作品になる。

もう一つの見所は、Katrina KaifとVijay Sethupathiの二大俳優が初共演。
ヒンディー映画とタミル映画の合作、ということだと思うのだが、最近、このような動きが増えているような気がする。
南インド映画の汎インド、グローバルでの成功がこのような動きを後押ししているのだと思う。

本作品自体は、ノアール、アンニュイな雰囲気で、まるでフランス映画を観ているようだ。
映像美が映え、一昔のMumbaiを舞台にしていることも効果的。
そして音楽もクラッシック音楽も交えて臨場感を高めている。

前半はスローテンポにストーリーが進むのだが、主人公の二人が何者なのか?に時間をかける。二人のモノローグ、その会話が哲学的でミステリー感を高める。

映画の後半から、徐々に全容が明らかになり、二人のキャラクターも現実化し、全てのエッセンスがエンディングに凝縮される。

この映画の形容は、ミステリーやスリラーではなく、ラブストーリーだと思う。それを、とてもユニークな形で描いたところが面白い。

AlbertもMariaも伴侶を殺めた。
愛は、お互いに理解できることから生まれる。

ピノキオを何度も観るAlbert。
嘘はついてはいけない、という信念を貫くが、嘘と真実と贖罪の思いが交差してくる。
Albertがきっと無意識に買ったクリスマスツリーの鳥かご。
最後に、その鳥がAlbert自身であることに気づくところが切ない。

ラブストーリーはハッピーエンドでない方が純愛感が表現できるし、心にも残る。

二大俳優の演技は、もちろん素晴らしいのだが、印象に残ったのが、Annieを演じた子役。何かに怯えるような大きな瞳。
そして、ストーリー的にも、AlbertがMariaに指輪を渡すきっかけを作ったのはAnnieだ。影の主人公かもしれない。

「Merry Christmas」
タイトルの通り、この映画はクリスマスイブ1夜に起こったことを描く。
そして、キリスト教、教会が舞台となり、「贖罪」の意識が試される。
この一日で二人の人生が大きく左右されるのだが、それはハッピーエンドであったのだと思う。(それを観客に投げかけて終わったところが秀逸)

様々なメタファーがあり、細部に凝った奥が深い映画を観たような気がする。独自性も高く、楽しむことができた。
Jun55

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