Jun55

君たちはどう生きるかのJun55のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.3
宮崎駿監督の強いメッセージが伝わってくる。
現在の社会が、脆い均衡の上に支えられている、ということ。
それをビジュアルで訴えかけてくる。
アニメーションでなければ示せない世界観。

その危機感を妄想の世界の中で悩んでいても解決にはならない。
脆い社会に現実社会で勇気をもって対峙していく。

ただ、社会の脆さを認識するには想像力が必要。
未来を読む力。
現代社会では、その能力が徐々に欠けてくる、という危機感があるのではないか。
つまり、全てが「Instance」な社会にあっては社会の脆さを感じることすらできなくなってしまう。

宮崎監督は、戦争の経験にあって、未来を読む力を養った。
特に戦争を体験している子供時代にあっては、現実の肯定感はなく、将来のみを思い、その不安の中で生活していたのだろうから。

世界中で戦争、紛争がなくならない。
日本は直接的な当事者ではないかもしれないが、これだけのデジタル化が進み、世界が互いに繋がっている現代社会においては、他人事ではないし、そう思うべきではない。
宮崎監督が経験した不安、脆さと何も変わらないのではないか。
想像力をどう働かせるのか、どう生きるのか?
それがこの映画のテーマだと思った。

「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)を早速買う。
映画と小説との繋がりについて考えながら読むことは贅沢な本の読み方かもしれない。
Jun55

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