藤井道人監督の作品。現生に未練を残した死者の世界。生者と死者の繋がりを描くという意味では非常に古典的ではあるが、「余命10年」同様にベタな題材を進んで選択し、良作に仕上げてしまう技量は藤井監督には間違いなくある。本作はオリジナル脚本。近年の震災を彷彿させる映画だが、現実の地名が登場しないのはファンタジーだからという理由だろうがよく配慮ができている。群像劇として各々の記憶を巡る構成で役者一人一人がフィーチャーされる中でもリリー・フランキーの芝居は徹底して本作を牽引していた。映画という装置を作品の中に持ち込むことが死者が生者に何を残せるか又は何を残していたかというテーマに直結する。渋谷ユーロペースまで登場するのはよいとして感傷的ではあるが展開に上手さは感じない。監督自身がNETFLIXと組んでまでしたかったことならばもうそれでよいのではないだろうか。
