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コヴェナント/約束の救出のhiyoriのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
4.0
ガイ・リッチーの作品。これまでクールなエンタメ作品を量産してきたが、今作はそれらとは一風変わった社会派の映画であり作られるべき映画としての気概を感じる。あらすじすら読まないで観ると二転三転する展開に驚かされる。前半のガイ・リッチーらしい綿密でリアルな死線上の戦地からその過酷さを示し、その後の展開に意味をもたらしている。米軍に雇われた通訳には報酬とビザを与えるという本来果たされるべき契約。これが脅かされる状況を命を救われた恩義に報いるという精神的な契りを用いて塗り替える映画表現に感嘆した。無下にされる多くの命を顧みることなく攻撃には報復をと繰り返してきた現在に何が残っているのか。二人の表情には安堵も見えるがその裏には国家間の紛争にいい加減疲弊し切った市民の顔が垣間見える。過去ではなく現代に対してシニカルな手付きであることが最も誠実に感じる。
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