hiyori

アメリカン・フィクションのhiyoriのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8
コード・ジェファーソンの作品。オスカーにも人種差別を題材にした映画がノミネートされることが定例化しているが、そういった風潮さえも一蹴するような内容を優秀な脚本でよく収めている。家族間だけでもジェンダー、高齢化、金銭面等あらゆる齟齬が生じる。その外側ならば尚更だ。人種差別批判に対して希望的観測を煽って金を稼ぎ、世間に迎合することは悪いことなのか。作家の魂は揺らげど無自覚に対抗し得る最大の術であるブラックユーモアさえも響かない悲壮感が強く残る。どうしても分からせようとしても分かってくれないどうしようもない社会。こういう革新的な映画がなければ変わらない社会がある。本作はそれでも人は変われるからと信じている作家の映画だ。映画の尺で見事な社会風刺として本質的に隠されている有様を暴いているあたりは本当に素晴らしくやはり脚色賞は必然ではないだろうか。
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