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蛇の道のzhenli13のレビュー・感想・評価

蛇の道(2024年製作の映画)
3.7
黒沢清ビギナーなので多くの過去作品からの比較はできないけど、リメイクによって1998年『蛇の道』の異様さ邪悪さはさらに際立ったと思う。
ブラウン管テレビなきいま、だからといって薄型テレビでいいのかとも。ナム・ジュン・パイクのビデオアート作品は薄型テレビでは成立しないように。ガラガラと運ばれたブラウン管のもたらす鈍重さは無い。ブラウン管もまた世紀末、90年代末のただならぬ臭気をもたらしていた。

1998年版は高橋洋の脚本の力も大きかったと再認識。謎の数式を解き続ける哀川翔主催の夜間塾と天才少女、「コメットさん」のようなサイキックかつ不可解で魅力溢れるサイドストーリーやキャラクターが本作では無くなり、あらゆる理由が明白に示される。何より、哀川翔の力が抜けていながら異様に緊張感のある佇まいと、香川照之の過剰な狂気はやはりでかかったのだなぁ。

良くも悪くも洗練されたのだろう。パリが舞台であり、死体袋を引き摺るのがゴルフ場ではなく狩猟の森で、監禁されるのはチンピラ然とした男たちではなくマチュー・アルマリックやグレゴワール・コラン(エンドクレジットで、え、グレゴワール・コランだったのか…おじさんになったなーと)で、監禁される場所も禍々しい廃工場ではなく、拘束具はあるが新聞で遮られた窓からの光が感じられる。

柴咲コウは頑張ってるけど冷酷という名の感情が出過ぎててわかりやすくなってしまっている感があった。西島の存在はあまりにも間が抜けていて、ルンバも含めこれは1998年版に無い面白さだった。そもそも街ん中であり得ないくらい雑に死体袋を引き摺る設定が笑える。マチュー・アルマリックも楽しんで死体を演じてるように見えた。

あと横移動ショットから銃を連射するシーンが変なジャンプカットみたいになっててビクッとしてしまった。
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