茶一郎

イカとクジラの茶一郎のレビュー・感想・評価

イカとクジラ(2005年製作の映画)
4.3
【記録】
 「コメディ版『シャイニング』」と、かのスティーブン・キングに言わしめた恐怖のイタい系コメディ。
 自分を客観視できない売れない作家の父親は、一方でどんどんと才能を発揮する母親によって男として、作家としてのプライドがへし折られていく。
 父親の物語と、監督ノア・バームバックの自伝的な息子の話を並行して語っていく。

 「大人になれない大人」、監督作品『ミストレス・アメリカ』のセリフを引用すると「朽ち果てた若さを引きずっている」大人のモチーフは以後、ノア・バームバック全作品に引き継がれていく。
 また、必ず「世界からの逃避」からの逆転も同じく監督作品全てに共通するが、今作『イカとクジラ』において、世界(その世界は険悪な父親と母親の関係だが)から逃避する行為を取るのは息子であり、これを監督に言わしてみると『大人は判ってくれない』のオマージュらしい。
 思えば編集意図を感じさせない荒々しい不思議な編集といい、実際のオマージュといい、今作を史上最高に格好悪い『勝手にしやがれ』と言っても良いかもしれない。
茶一郎

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