ゴトウ

フォロウィング 25周年/HDレストア版のゴトウのレビュー・感想・評価

3.8
短っ!70分しかないけど十分満足できた。作品自体はもちろん、プログラムの情報量も多くておもしろく読んだ。当時ノーランチームは予算や技術、人手の都合で2~3分の短編を作りまくっていたらしい。その時代を経て長尺作品ばっかりになっているのも、鬱憤晴らしとかではないのだろうけれど、好き放題やれる環境を手にいれるまでに持てる武器で戦っていたんだなと思った。

白黒なのも予算・機材都合、プラス当時ノーランが傾倒していたフィルムノワールへのオマージュとのこと。誰にもある窃視の欲望、俯瞰視点にいたつもりがいつの間にか得られる情報をコントロールされて手玉に取られてしまう展開、映画というメディアと観客の関係性のメタファーとも取れる。『オッペンハイマー』に感じた、映画そのものへの言及っぽい雰囲気はこちらの方がわかりやすかった。どこからどこまでが本当だったのかもわからぬまま、観客はビルとともに放り出されてしまう。時系列の混乱が入る「節」もすでにやっていたんだな〜(丁寧に髪型やケガで時期の違いを示唆しつつ)とか、その後の諸作品のことも考えながら観てしまった。話としてはどうということもないけれど、音響面の安っぽさを感じさせないためにセリフのやり取りから始まるとか、銃をそれらしく見せる予算がないからハンマーを使ったとか、制約の中でクオリティコントロールをしてこれだけのものを作っていたのが恐るべき才能だなと思った。しかもこれを持って映画祭などを回っている時には『メメント』の脚本ができていて、それを見せて制作の足場固めをしていたという。ビジネスマンとしてもすごいのか。

見知らぬ他人の生活に勝手にドラマやロマンを読み取ろうとする危険さとか、わりと映画自体・作品自体を客観視しているように見受けられたので、つくづく『オッペンハイマー』の広報やらかしに首を傾げたくなってしまう。単にアホスタッフのやらかしとしては理解してくれない(特に日本の観客は)でしょうに……。
ゴトウ

ゴトウ