ゴトウ

サイコ・ゴアマンのゴトウのレビュー・感想・評価

サイコ・ゴアマン(2020年製作の映画)
3.8
どう考えてもしょうもないだろ…と思って観始め、ちゃんとしょうもないものに仕上がってて面白かった。個人的な愛が、結果的に自分たちの家族や友達以外の滅亡につながっても関係ねえ!という思い切りがすごい。反「ポリコレ」(排外主義者の発言や単に事実誤認の雑な語りに頻出するガバガバ語)的なノリは80年代と結びつきやすいのね。

自らが抑圧していた対象からのカウンターを受けた途端に、「平和を乱すもの」認定してサイコゴアマンを滅ぼしにかかったり、「守る」と言いつつ地球人をなんの躊躇もなく殺せたり、「正義」「天使」を標榜する敵のあり方はかなり傲慢。一方で、サイコゴアマンの方も最後まで明確な「改心」みたいなことはしない。ミミやルークですら、街中で出会う人間が肉塊に変わってもなんとも思わないし、破滅的な結末はいわゆるハッピーエンドとは程遠い。いいもん/悪もん、正義/悪みたいな構図の最終決戦を、妙なオリジナル競技で間抜けなゲームとして描いてみせたこと、そしてその決戦を親子/夫婦/兄妹の喧嘩として見せ切ったところは意欲的というか、ひねりのある部分のように思った。「正しさ」を巡る対立を、親子関係の逃れられなさや理屈抜きの「愛」と重ねたのは、やや素朴かもしれないけど(家族像も「ダメなお父さん」や「発達障害っぽい娘」がいる以外は保守的ともいえる)、向き合い続けること、問い続けることの重要性の話とも見えて、粗雑な反「ポリコレ」文脈と並べるのははばかられる。

アホくさいと思えるゲームを全力でやって、そこにある問題に向き合えるサイコゴアマンやミミの家族。それに対して、ルールを理解しようともしない(一発でわかるの無理があるルールでもあるけど)パンドラ、という対比も聞いている。お仕着せの「正義の力」をインストールされたお母さんがロボットのようにぎこちない動きをしていたのも印象的。

昭和特撮とかに影響受けてそうな(日本語しゃべってるし)チープな着ぐるみキャラ、不必要な血しぶきと肉体欠損描写、そんなわけない話の筋などなど、ありえなすぎてよかった。「めちゃ強いのに女の子の許しがないと殺しもできずに言いなり」という面白がずっと続いていたので、『アラジン』のジーニーのごとくミミが許しを出して活躍!がクライマックスに来るのかなと思っていたので、殺戮マシーンの意思に全てを任せる展開が来るのもよかった。その結果世界が滅びても、私たちとあなたは友達だから関係ないよ!を無責任と取るのか美しいと取るのか……などと真剣に考える気もあんまりなくなるおバカっぷりでした。
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