カルダモン

幕末太陽傳のカルダモンのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.2
佐平次(フランキー堺)は品川の遊郭にずーっと居座って無銭飲食のままダラダラと過ごすうちに、持ち前の調子の良さでもって客商売の才覚を発揮する。やがて遊郭になくてはならないほどに馴染んでしまい、挙句には遊郭全体を回し出すほどの信望を獲得してしまう。

ドラマのほとんどが室内で進行するいわゆるグランドホテル形式の作品で、遊郭全体がひとつの社会のように、そこで描かれる人間模様に生命力を感じる。二階建て木造建築の舞台も素晴らしいのだが、撮影所のオープンセットなのだろうか。

最初は膨大な台詞の応酬にグッタリ疲れ気味になるけれど、だんだんとエスカレートしてハイになる。落語譲りの言葉は切れ味鋭く格好いい。男も女も、現代人が束になっても敵わないくらいに威勢がいい。
遊郭には英国公使館の焼き討ちを目論む高杉晋作(石原裕次郎)も滞在しており時代の変化も描かれつつ、わちゃわちゃと忙しい。そんな騒動が終わりを迎える頃、ライバル同士だったおそめとこはるが並んで居眠りしてる場面が好きだった。

この映画のラストはわりと唐突で若干戸惑ってしまったのだが、観終わった後で調べてみたところ脚本段階では幻のラストシーンというものが存在していたようです。どうやら佐平次が映画セットの壁をぶち破って現代に現れる、というものだったらしいのですが、惜しいですね、このエンディングが実現していたら完璧だったかも。



因みにアートワークがカラー映画風ですがモノクロ作品です。