「打ち上げ花火上から〜」とか「ジョゼと虎と〜」とかみたいに、アニメでリメイクしたらおもしろくなりそうな映画として、以前から思っていたんだよね。そしたら本当にアニメ映画化された!マジでビックリしたわ。
映像化したのが新進気鋭の櫻木優平監督。若いけどかなり有能な演出家で将来有望だと思う。
今作は興行収入的には厳しそうだが、そんなのは松竹のプロモーションが悪いだけなので、今後とも制作のチャンスを与えて欲しい。
田中麗奈の実写版では、時代設定を70年代にしたこともありかなり朴訥な雰囲気に仕上がったが、今作は現代を舞台にCGアニメ特有の鮮やかな色彩で鮮明に作られた。
同じ原作の同じストーリーだが、アプローチの違いでこうも変わる物かと驚きだ。
田中麗奈が演じた悦ねぇが主人公。無理してまで競争に挑もうとすることのない性格だが、ボートに関わることにより、仲間と共に力を合わせて頑張る姿が描かれる。
悦ねぇの幼なじみ・姫。埼玉からの転校生リー。幼なじみでライバル同士のダッコとイモッチ。
キャラクター設定もイマドキのアニメに準じた感じに変更されてる。絵柄で敬遠する人も多いと思うが、各キャラの性格付けの違いとか色々面白かった。悦ねぇが基本的にマイナス思考から始まってるので、彼女の成長劇が見て取れる。
興味深かったのは音楽についてだ。サントラで野球拳が使われてて何でかなと思ったら四国のお座敷遊びの歌なんだね。老先生の運転するワゴンの中でも民謡が流れていたし、地域性を演出しているのがわかる。エンディングで使われたテーマ曲も作風に合ってて良いと思う。
ただ、クライマックスの試合いでの音楽は、ちょっと実写版に寄せてった気がして今作には合ってない気もした。ここは実写版とは差別化して欲しかった所。思い切ってバトルシーンでを盛り上げても良かったのに。
実写版では、全校集会で「頑張っていきまっしょい」というシーンで、1年の時は驚いていたが2年では大声で「しょいッ!」てかけ声をかけていたシーンがあった。「しょい!」を受け入れた象徴的なシーンだった。
アニメ版では学校行事でボートによるリクリエーションという形で表現されているね。
そういう差異を比べるのも面白いね。
印象だけで好き嫌いせずに鑑賞することをお勧めする。隠れた青春アニメ映画の傑作だと思う。