茶一郎

河童のクゥと夏休みの茶一郎のレビュー・感想・評価

河童のクゥと夏休み(2007年製作の映画)
3.9

『人間はなぜ、変わってしまうのか』

オトナ帝国の原恵一監督脚本作品。主人公とその家族がカッパを拾ったことで変化する人間模様と生活を、抑えた演出と緻密で綺麗なアニメーションで描きます。


単なる子供向けのイマジナリーフレンド物とは訳が違うことは、冒頭のカッパクゥの父親の死の描写から明らかで、大人が真に楽しめるようなエンターティメントのように感じました。

また、人間の描き方がすごく上手く、改めて『アニメーションにおける演技』を考えさせられました。

一方、不満点は無いことはなく、カタルシスを生むはずの相撲の件が抑えた演出のせいでやや弱くなっているように感じてしまったことと、全編として4回の物語的な展開があるのですが、その2つ目は実はカットできるような気がします。というのも本編138分と子供向けにしてはやや長いように感じました。

その2つ目がとてもリサーチがしっかりしていて緻密に描かれている町の様子や川泳ぎの様子など個人的には大好きなのですが…


『私も変わってみせる。新しい場所に飛び込まなくちゃ』
人間は確かに変わりますが、変わることこそ人間の良い所でもあり、悪い所でもある。


こんな強いメッセージを嫌味なく、押し付けがましくなく伝えられることこそアニメーション表現の一つの利点なのかと再認識することができました。
茶一郎

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