シズヲ

スウィート・スウィートバックのシズヲのレビュー・感想・評価

4.3
出だしで「何だこれは」ってなるし、最後まで見ても「何だったんだこれは」ってなる狂気的ブラックパワームービー。下ネタとバイオレンスが入り交じった粗削りすぎる映像でとにかく突っ走る。自主製作映画なだけあって展開や演出はかなり乱雑だけど、とにかく尖った撮り方を延々と見せつけてくるので癖になってくる。そこに挟み込まれるファンキーなサウンドの数々もまた奇怪な疾走感を作り出している。無名時代のアース・ウインド・アンド・ファイヤーまで関わっているのでたまげるし、中盤で流れる「頑張れ脚」の曲なんかも異様すぎる。

冒頭のテロップで白人社会に辟易した黒人の同胞に捧げる旨が述べられているし、実際に作中では当時の黒人の生々しいコミュニティーや生活が描かれている。終盤にバックで流れる合唱はもはや彼らの絶叫じみていて余りにも衝撃的。メッセージ性らしきものを内包しつつも全編に渡って繰り広げられるのは只管にアバンギャルドな世界観なので、カルトとしか言い様のない魅力が詰まっている。後に出てきたブラックパワームービーの代表格「黒いジャガー」は良くも悪くも洗練されていたけど、本作はもう凄まじくカオス。これが初めて世に送り出された時のインパクトは想像に難くない。
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