シズヲ

このハンバーガー、ピクルス忘れてる。のシズヲのレビュー・感想・評価

3.9
観覧車での告白を皮切りに、代わる代わる繰り広げられるマンツーマンの会話劇。『違う惑星の変な恋人』を見ようかなぁと思ったまま時間ばかりが過ぎて、結局なんやかんやでこちらを先に鑑賞。どうやら元々ドラマだったものを映画用に再編集したものらしい。それはそうとタイトルがあからさまにJ・D・サリンジャーのパロディでしみじみする。

全編に渡って漂うオフビートなノリは今泉力哉監督を思い出すけど、本作はあちらから一貫したテーマ性を引っこ抜いて漫才的なムードをより強めたような趣がある。一種のシュールなコメディである。先輩くんのキャラ付けからして象徴的だけど、掛け合い自体がウィットに富んでいるというよりかは間の空気感やテンポの滑稽さを楽しむ作品である。

会話の内容自体は終始ヘンテコで下らないけれど、間の抜けたテンションやふてぶてしくも憎めない漫才の様子には不思議な愉快さがある。開幕から観覧車での気まずいシチュエーションにフフってなったし、先輩の煮え切らなさと女子組の遠慮のないツッコミぶりは何だかんだおもろい。アキちゃんの「ニューシャネル」Tシャツが味わい深い。常にマンツーマンの掛け合いで終始している内容や役者の演技の抑揚も相俟って、生々しさのある舞台劇のような趣に満ちている。

序盤の話題としてシモネタを2連続でお出ししてくる構成にはバランスの悪さと品の無いウケ狙いを感じてちょっと引っ掛かる。またタイトルロールからしてタランティーノライクっぽいけど(『パルプ・フィクション』もハンバーガーの話題がっつり出てくるしね)、同じような時系列シャッフルの編集・演出はぶつ切り感が強くてそれほど洗練されている風には見えない。とはいえ(冒頭で失敗することが既に分かってる)告白の特訓過程のシーンを終盤に持ってくるような構成のユーモアはなんやかんや好き。

元々がドラマ版の再編集版ということもあって全体的に平坦なテンポなのも気になるけど、それでも登場人物達に愛嬌があるので噛み合わない漫才にも憎めない味がある。会話劇のノリが合わなければ終始乗り切れない内容ではあると思うけれど、自分は何だかんだで楽しめた。この手の作風の映画、これくらいの短い尺が丁度いい気がする。
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