広島カップ

氾濫の広島カップのレビュー・感想・評価

氾濫(1959年製作の映画)
3.5
企業の雇われ化学者の男(佐分利信)は画期的な接着剤を開発して認められ出世をし重役になり羽振りが良くなる。それを境に彼の周りの人達が浮かれだしたり彼に集りだしたりし始める。

妻(沢村貞子)は娘(若尾文子)のピアノ教師と浮気を始め、出世した父に取り入ろうと画策する若い化学者(川崎敬三)は娘をものにし結婚をしようとする。男自身も昔の女(左幸子)に騙されて金をむしられる。

抑揚がありハキハキした喋り方をする役者達に囲まれて浮き立つボソボソ佐分利信の本領発揮。いつ口を開けてるの?あなたはいっこく堂かい?という存在感。
やがて男は重役をクビになりただの研究者に戻ってしまう。彼に集ろうとしていた輩は皆消えて行く。一家にはバブルが弾けたような喪失感が残るが男には安住の地に戻ったような表情が戻っていた。

最後の彼の表情を見ていると元来が学術肌で研究者タイプの男が会社組織や人間関係に翻弄された哀しい喜劇に見える。佐分利の話術?が冴えている。
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