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ボウリング・フォー・コロンバインのSUIのレビュー・感想・評価

4.0
武器の使用あるいは所持を正当化する主張と、魔女狩りのごとく銃犯罪の責任を別のモノへと転嫁するダブルスタンダード。
その中で悪の代名詞として吊るし上げられたマリリン・マンソンの言葉が核心を突いている。
「米国経済の基盤は恐怖と消費の一大キャンペーンだ。恐怖を抱かせて物を買わせる。突き詰めると、そういう事さ」

クライマックスで全米ライフル協会の会長であるチャールトン・ヘストンにインタビューするが、そこではこれほど説得力のある言葉は聞くことができない。
自信満々で主張した銃所持の正当性をあっさりと論破され、分が悪くなるとその場を立ち去る逃げ足の速いこと。所詮はその程度の人間がただ強い発言力を持っているだけでしかない。

物語のテーマとなっている「コロンバイン孝行銃乱射事件」の犯人は、直前にボーリングをする2ゲーム行ってから犯行に及んだという。
彼らがマリリン・マンソンの曲を聴いていたという理由だけでマンソンは非難されたのに、ボーリングを非難する者は現れなかった。とどのつまり、マンソンをスケープゴートとして吊るし上げることで、銃犯罪の根本的な問題は度外視され、何かに責任転嫁して煙にまく。という銃犯罪とアメリカ人の根本的な問題に焦点を当てている。

銃はなにがしかの規制はされてしかるべき事だというのは、チャール・トンヘストンのような愛好家達を除いて誰もが思うところである。
その正義を傘に着て正論を振りかざすマイケル・ムーアの姿勢は少し鼻に付くし、そんな彼の視点で描かれている今作ではその主張の正当性が担保されているのは当たり前ともいえる。
でも、それを抜きにしても問題の核心をついていると思えた。そう納得させる力のある作品だった。
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