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THE FIRST SLAM DUNKのSUIのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
5.0
なぜ今スラダン?
という拭いきれない今更感と、CGアニメ特有のあのインチキ臭いヌルヌル感に嫌悪感を抱き、何となく興味が持てずにいた第ゼロ感。

スラダンは学生時分にジャンプで読んでいたのでその面白さは身に染みるほど知っていたけど、単行本を持っていたわけではないし、TVアニメは未履修。バスケ経験者でもない。
なので、ざっくりとしたストーリーを把握している程度で、熱心な読者ではなかった。
しかし今作が公開されるやいなや絶賛に次ぐ絶賛、否が応でも賞賛コメントの嵐を目にする毎日。まるで、劇中の試合の興奮そのままの熱量でどいつもこいつビンビンじゃん。

山王戦である。
作者のイノタケ本人が、これ以上の面白い試合は描けないといったあの名試合である。
それは熱いに決まっている。
そして花道ではなくかといって流川でもない、168センチの切り込み隊長宮城リョータが主役という所もまた憎い。
早速ネトフリでTVシリーズを全話視聴してからいざ劇場へ。

なるほど、世間の評判に偽りなし…、というかそれ以上だった。

まず、これまで見たことのない映像表現に驚かされる。
前述のようなCGのあの嫌味な部分はすっかりそぎ落とされ、「井上雄彦が描いた絵がそのまま動いている」という感動だけが残る。
そして試合のシーンはまるで自分がそのコートに立っているかのような臨場感で迫ってくる。
更にはバックで流れるBGMのドライブ感でテンションをさらに盛り立ててくる。

劇伴に関していうと、まずザ・バースデーのOPがとにかくカッコいい。シビれるほどかっこいい。どれだけ控えにいってもとにかくカッコE。
人気・知名度・実力からいって、ヒーローたる常勝山王に対して、ふてぶてしく立ち向かう悪者軍団湘北バスケ部。この構図にチバユウスケのガラの悪い嗄れ声がこれ以上ないほど調和している。
BGMはザ・バースデーでなく10-FEETなんだけど、そのOPの印象が強く尾を引いているおかげで、試合中のBGMが演出として活きてくる。それだけでなく、ちゃんと曲のドライブ感も目まぐるしい試合展開にあっていて、試合の抜き差しならない迫力がビンビンに伝わってくる。
でも、EDはなんというか、ここまで褒めちぎっておいてなんなんだけど、ぶっちゃけなんかダサい…。
イントロ、というか曲はいいんだけど、ヴォーカルの声と厨二っぽい歌詞からそこはかとない青臭さを感じる。
まあ青臭さくてもいいじゃん? 高校バスケだもの…。

山王戦を細切れにして試合のスピード感や没入感をぶった切ってまで、リョータの過去をメインストーリーにぶち込んでくるのはなかなか力技。
試合を通しで見たいという欲望はあるけど、それだと本当にただの試合観戦みたいになっちゃう。だからリョータのストーリーは、ゲーム展開と物語に深みを出す意味でもこれは外せない。

映画の出来栄えがあまりに良過ぎたので、2度劇場に足を運んだ。
更にもう一回行ってもいいかな、と思うくらいには最高な映画だった。

たぶんこの映画の良さは、劇場で観ないと十分には伝わらない。
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