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スリーパーズのSUIのレビュー・感想・評価

スリーパーズ(1996年製作の映画)
3.5
ヘルズキッチンに暮らす「不良」というほどではない悪ガキ4人組が、冗談半分でホットドッグを盗んだことで少年院送りになり、そこで人生の歯車が大きく狂う。

主人公のシェイクス(ジェイソン・パトリック)は新聞社に、爽やかイケメンのマイケル(ブラピ)は検事に、中でも地味な2人、無個性なトマスと気弱なジョンは街のチンピラへと成長を遂げる。
トマスとジョンはバーでたまたま少年院監守のノークス(ケビン・ベーコン)と再会し、そこで当時受けたレイプの復讐を果たす。
記者のシェイクスと検事のマイケルはその殺人事件の裁判を利用して、残りの3人の不良監守に対する復讐を計画する。

裁判の証言であからさまに性暴力や性的嗜好を白状させている。それで「宣誓下で嘘は吐けない」という宣誓の効力の強さを、観ている我々の意識にすり込んでいる。
そしてそのことが、ボビー神父(デニーロ)に偽証させることの重大さ、難しさ、を印象付ける伏線になっているところは非常に上手かった。

しかしそうまでして結果的に全員に復讐を果たし、トマスとジョンを無罪にした割に、爽快感はほとんどない。

というのも、いくら性暴力の復讐とはいえ実際に殺しちゃってるし、そもそもその実行した2人は別件でも殺人の嫌疑がかけられている札付きの殺し屋だ。そんな彼らにも対しては同情の余地はあまりなく、無罪になっても諸手を挙げて喜べるわけがない。

そしてなんといっても、一番はじめにノークスを殺してしまったのがどうにもよろしくない…。
シェイクス達を積極的に凌辱していたのがノークスであり、残りの三人はそれに追随していただけの小物でしかない。
そんな雑魚との裁判がこの映画のクライマックスなわけだけれど、いくらポンコツ弁護士のダニー(ダスティン・ホフマン)の面目躍如とボビー親父の葛藤に見応えがあったとはいえ、どうしても盛り上がりには欠けしまう。だって、リーダー格のノークスはいわばラスボス的な存在であるべきで、それをはじめに殺してしまった事で他の3人に対する復讐は「ついで」にしか感じられないもの…。

物語の着眼点や主題・ストーリーは魅力的なのに、構成でそれを打ち消しちゃっている。
という、少し残念な作品。
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