stanleyk2001

氷点のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

氷点(1966年製作の映画)
3.4
『氷点』
1966(昭和41年)
大映

北海旭川市に住む元教師の三浦綾子が朝日新聞の懸賞小説に応募して見事に入選。朝日新聞連載時から話題になり映画化。

プロテスタントのキリスト教徒だった三浦綾子が書いた原作はキリスト教の「原罪」がテーマになっているらしい。

「原罪」はエデンの園でイヴが蛇に唆されて善悪を知る知恵の実を食べアダムにも実を勧めて無邪気な存在から罪深い存在になったことを指す。

ヤハウェは「女に対しては産みの苦しみと夫からの支配を、アダムに対しては地から苦しんで食物を取ることと土にかえることを預言した(創世記3章16節 - 19節)」

アダムとイヴから生まれて世界中に広がった人間は生まれながら原罪を受け継いでいる。やれやれ。酷い教義ではないか。生まれただけでダメ出しされてるなんて。東方教会では「原罪」は重視されていない。

現在は日本以外では無痛分娩が広く行われ男による支配はモラハラ、DVとして糾弾される。農業は機械化されて肉体的に苦しみながら営むものではなくなった。いい世の中になった。

閑話休題。

『氷点』のテーマや物語が「原罪」どどう関わっているのか知識のない私にはよくわからなかった。

ただ『氷点』が後世におおきな影響を与えた作品だということはわかった。

『氷点』のあらすじ。旭川市の医師夫妻の3歳の女児が川べりで絞殺される。犯人は自殺。犯人の妻はすでに病死しており女児が一人残され施設に保護された。

娘を殺された医師の座右の銘は「汝の敵を愛せ」。だから娘を殺した犯人の子供を引き取って養子にした。医師の妻は避妊手術をしていたので子供を産むことはできないという事情もある。

ところがこれには裏がある。医師の妻は娘が絞殺された時に情夫を連れ込んで浮気をしていた疑惑がある。医師は妻を罰するために親友の産婦人科医に頼み込んで養子として迎えた。

医師は妻には養女が犯人の子供だとは教えていない。養女陽子を溺愛する妻を見て医師は心の中で秘密が明らかになった時の妻のダメージを想像してほくそ笑むのだ。やな奴。

娘・陽子は明るく人を疑うことを知らない素直な娘に育つ。医師の妻は夫が残したメモから養女が犯人の子供だと気がつく。発作的に娘を締め殺そうとする妻(若尾文子)が怖い。迫真の演技。

医師夫妻の長男・徹(山本圭)は陽子(安田道代、現大楠道代)と血が繋がっていないことを知っており女性として意識してしまう。

医師(船越英二)は成長した娘の肢体にムラムラする。

養母(若尾文子)は陽子とボーイフレンド北原(津川雅彦)の恋を邪魔して北原を誘惑する。

津川雅彦に振られた若尾文子は娘と津川雅彦の間を引き裂くために娘に「あなたは殺人犯の娘なのよ」と秘密を暴露する。

絶望した陽子は睡眠薬を飲んで自殺を図るのだが、、、

ドラマチックかつ破天荒な展開。『氷点』は映画化された後何度もドラマ化されて台湾でも映像化された。

そして今『氷点』を見ると思い出すものがある。1980年代に大映テレビが製作した「赤いシリーズ」だ。宇津井健、山口百恵を主演。出生の秘密。素直で健気な少女の過酷な運命。たくさん共通点がある。

大映テレビの「赤いシリーズ」は韓流ドラマに影響を与えた。

『氷点』は今見ると「そんな破天荒な設定あるかよ」と突っ込みたくなる点がある。当時はみんな真剣に夢中になったんでしょうね。

・大楠道代さんは口角がキュッと上がってとてもキュート。
・若尾文子さんも「悲劇の母」から「継子いじめの鬼義母」、「息子と同じ歳の若者を誘惑するマダム」と様々な姿を見せる。
・若尾文子の愛人は成田三樹夫。夫(船越英二)と顔を合わせた時の決まり悪そうな表情が良いね
・北海道の大自然でのロケも素晴らしい。
・東宝から森光子さんが出演している。踊りのお師匠さん。良い雰囲気です。
・子供時代の陽子の兄・徹役は津沢彰秀さん。『ウルトラマン』のホシノ・イサム少年だった。懐かしい。
・昭和の日本映画は冒頭にスタッフや出演者タイトルが出るのだが、この映画はエンドタイトルにスタッフと出演者がでた。珍しい。
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