マヒロ

お引越しのマヒロのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
4.0
離婚が決まり別居することになった両親のうち、母親のなずな(桜田淳子)と二人暮らしすることになった小学生のレンコ(田畑智子)だったが、父親のケンイチ(中井貴一)とも離れ難いレンコは何とかして二人の関係を元に戻そうとするが……というお話。

田畑智子のデビュー作とのこと。変に子役っぽい演技臭さが無く、本人そのままみたいなナチュラルな子供らしいところが良い。ポスター画像では爆発頭+『未来世紀ブラジル』みたいにほっぺた引っ張られて凄いことになってるが、本編ではおかっぱ頭に丸っこい顔のおぼこい子で、コテコテの京都弁も相まってかなりキャラが濃い。
桜田淳子と中井貴一の両親も、どちらもどこか砕けた感じの接しやすそうな二人なんだけど、それでも離婚に至るまでに何かがあり、もう決して心が交わることがないんだろうなと思わせられるような距離感があり、レンコが何をしても仲が戻ることはないんだろうというところが物悲しい。

『セーラー服と機関銃』を観た時は、キャッチーな題材とは裏腹にものすごく冷めた演出…登場人物達を遠景で捉えた長回しや唐突な暴力描写などに驚いたんだけど、今作ではそこら辺の演出は控えめ。長回しもあるっちゃあるが、カメラは割と人物を近くで映していて、レンコという主人公に寄り添っているような印象。
後半、レンコが琵琶湖を一人で彷徨うところは奇妙な夢のような幽玄さすらあり、脳裏にこびりつく不思議なシーンで、『セーラー服と〜』とはまた違った商業的意図を度外視した監督の拘りみたいなものを感じられてシビれた。

物語自体はよくある通過儀礼ものと言えるけど、そこから滲み出るような監督の作家性がたまらない一作だった。

(2021.36)
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