マヒロ

ロバート・アルトマンのイメージズのマヒロのレビュー・感想・評価

3.5
(2024.35)
夫の帰りを待つキャスリン(スザンナ・ヨーク)は、謎の女から夫が浮気をしていると言う旨の電話を受け、精神のバランスが崩れていく。おかしな言動が多くなってきたキャスリンを心配した夫のヒュー(ルネ・オーベルジョノワ)は彼女を連れて田舎に移り療養させるが、症状は悪化する一方で……というお話。

アルトマンというと人間ドラマをシニカルな目線で描いたブラックな作品のイメージが強いが、今作は精神的に追い詰められた女性をじっくりと描いたサイコスリラーのような作品で、これまで観てきたものとは少し毛色が違ってなかなか新鮮だった。
全編に亘ってキャスリンの主観的な視点で映像を見ることになるが、彼女は幻覚や幻聴に悩まされており、例えばさっきまで目の前にいた人が忽然と姿を消したり、気づいたら別人に変わってしまっていたりと、見たままの情報を信じることが出来ずこちらまで混乱させられる。似てるなと思ったのはフローリアン・ゼレール監督の『ファーザー』で、シームレスに目の前の情報が書き変わってしまう演出は参考にしたんじゃないかなってレベルで似ている。

音楽はジョン・ウィリアムズ御大が担当しているが、時折尺八のような音が鳴り響いたりする日本の怪奇映画みたいな劇伴でこれまた奇妙。音楽のクレジットに“ストム・ヤマシタ”という名前があったので日本の人が関わっているみたいだが、画面は完全にアメリカ映画なのでその音楽との食い合わせの悪さも掴みどころのない映画を表しているかのようだった。

全編に亘って今見ている映像が信用ならないという状態が続き、ゾッとするような怖さもありつつ最後の方は若干気疲れしてしまったところもあったり。まぁ、映画のコンセプト的にそうなるのが正しいという気もするが、個人的には何かもう一つフックになるような展開とかがあってくれても良かったかなと思った。
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