マヒロ

カインド・ハートのマヒロのレビュー・感想・評価

カインド・ハート(1949年製作の映画)
4.0
(2024.34)
貴族であるダスコイン家の家系に産まれながら、音楽家と駆け落ちしたことで一家から冷遇され続けた母を持つルイは、母の死の間際にも無視を続けたダスコイン家に復讐をするため殺害の計画を立てる……というお話。

何やら血生臭さのあるあらすじだが、実際は全編とぼけた雰囲気の漂うコメディ。割と適当にダスコイン家を狙っていくルイだが、それで足がついてバレそうになる……みたいなサスペンス展開もなく、粛々と目的を達していく姿を描いており、人の死をユーモアとして扱うブラックさがイギリス流って感じで良かった。
狙われるダスコイン家の面々は何故か全員アレック・ギネスが演じており、何と一人8役。女性もいるので女装したりしているが、ここで脅威の演じ分けを見せてくれるとか言うわけでもなく、あくまで同じ人がやってるというだけで特に意味もなさそうなのがまた人を食ったようで面白い。強いて言うなら全員同じ顔なので視覚的に誰がターゲットなのか分かりやすいというのは地味にありがたかったが。

物語は処刑直前のルイの姿から始まるが、そこからの回想で現在に戻ってくるまでの流れが結構意外で、そこからもうひと展開見せてくれるのも良かった。ラストシーンも実に皮肉っぽいイジワルなところで幕切れを見せ、最後まで徹底してシニカルなノリを崩さない斜に構えた感じがもはやオシャレですらある。モノクロではあるが、時代を感じさせない軽やかさのある良作だった。
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