カルダモン

お引越しのカルダモンのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
4.5
謎にデザイン性の高い三角形のダイニングテーブルが部屋のインテリアから浮いていて、終始気になって仕方がなかった。親子の描く直角三角形。長さの違う3つの辺。三平方の定理。a二乗+b二乗=c二乗。父と母と娘が食卓を囲むありふれた風景が、このテーブルのおかげで妙な緊張感を生んでいた。

魚さえまともに食べられない父親の、どうにも頼りない背中でさえ愛おしい。すぐ会いに行ける距離だからこそ、なぜ離れて住まなくてはならないのかという子供の疑問符を強調させるようだった。

レンコの心象として現れる琵琶湖に浮かんだ燃える山車の幻影。遠くに消えていく母ナズナと父ケンイチを不安そうに見ている。自分を抱きしめる自分。燃える山車に手を振って「おめでとうございます!」と連呼する。一体何がめでたいのか。私にはわからなかったがレンコの顔はどこか晴れやかだった。

レンコは成長する。
まだまだ成長したくなくても。
子供のままで居たくても。
母ナズナは成長する。
子供の成長とともに。
父ケンイチは成長する?
家族との離別とともに。


電車でキャラメル食べるシーンと、
エンドロールが大好きだった。
自分の記憶を覗くような切なさがあった。