ひろ

川の底からこんにちはのひろのレビュー・感想・評価

川の底からこんにちは(2009年製作の映画)
4.0
石井裕也監督・脚本、満島ひかり主演によって製作された2010年の日本映画

上京して5年、仕事も恋愛もうまくいかず妥協した日々を送る佐和子(満島ひかり)は、父親が病で倒れたことから帰郷。一人娘のため父が営むしじみ加工工場の後を継ぐことになるが、従業員のおばさんたちには相手にされず、会社の経営も倒産寸前に追い込まれていた…。

大学の卒業作品から注目され、いくつか撮った低予算映画は海外で評価されてきた石井裕也監督。そんな監督の商業映画デビュー作品。いま最も注目されている監督の1人だけど、こういうオフ・ビートな作品を撮れる監督が日本にも出てきたのは喜ばしい。

世の中で注目されるのは一部の才能溢れる人間だが、世の中を動かしているのは、その他の大多数の普通の人たちだ。この映画はそんな普通の人たちに向けた応援歌だ。「しょうがない」と諦めながら生きている主人公の「しょうがない」が、少しだけ前向きになっていく姿には多くの人が共感するだろう。人の不幸を笑いにしてるのも、不謹慎だが面白い。

仕事も恋愛も最低な主人公の佐和子を演じたのは、いま最も注目される女優である満島ひかり。あの園子温監督が脱帽した演技力は確かなもの。感情を抑えた演技が上手いから、感情を爆発させた時のギャップが大きくて釘付けになる。この作品の監督である石井裕也と結婚したのには驚いた。

自分より年下で、こういう面白い作品を撮る監督が出てきたのは年取ったなあって気分になる。それでも、甲子園の高校球児や、箱根駅伝の選手が大人びて見えるように、才能を感じる監督は、年下とか関係なしに尊敬してしまう。これからが楽しみな監督だね。
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