こたつむり

のるかそるかのこたつむりのレビュー・感想・評価

のるかそるか(1989年製作の映画)
3.8
♪ 俺はクズだし 確信はないけど
  不自由と嘆いてる自由がここにある

他人からバカげたことだと言われても。
一心不乱に挑戦する姿は格好良いと思います。
それに彼らは魂を削って闘っているわけで。
安全圏にいる第三者が嘲笑うのは失礼じゃないでしょうか。

ただ、それを評価するかどうかは別の話。
挑戦した姿勢と結果を同列に語ってはいけません。たとえ格好良くても、敗北すれば「負け犬」と謗られることもあるのです。

本作はそんな男の物語。
土曜日の昼下がり、男は挑戦を続けます。
負け続けても、負け続けても「次は必ず来る」と口にして立ち上がるのです。それが長年に亘って行われていたのは“男の顔の広さ”が如実に語っていました。並大抵の“常連”とは一味違うのです。

いやぁ。格好良いですね。
対象が競馬じゃなければ…。
もっと評価されても良いと思いますよ。
何しろ、諦めたらそこで試合終了ですからね。

ただ、角度を変えればギャンブル依存症。
「今回だけは」とか「方向性は間違っていない」とか「これはビジネスだ」とか言いますから、重症の可能性もあります。

しかし。しかしですよ。
次のレースは8連敗中の大穴が勝つ…そんな情報を耳にして大金を賭けることが出来るのは、頭のどこかが“ブチ切れている”証拠。やはり、物語の主人公としての“器”があるのです。

勿論、映画ですからね。
現実を超えた部分があるのは当然の話。
例えば、ジェニファー・ティリーの存在は顕著でした。彼女の声、笑顔、スタイル。それは脳味噌を蕩けさせる天上界の欠片。本作が“ファンタジー”だと雄弁に語っているのです。

まあ、そんなわけで。
ギャンブル好きが本作を鑑賞すれば運気を上げるかも?しれない作品。現実を知っていれば知っているほど、破滅の足音を感じ、とてもスリリングに仕上がっていると思います。興行収入が芳しくなかったようですが、そんな断片で捉えると損をしますよ。
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