ウィリアム・ボーディン監督作品！

アカデミー・フィルム・アーカイブ映画コレクション②

1925年制作。
映画芸術アカデミーの創立メンバーであり、伝説的名女優のメアリー・ピックフォードが制作、原案・主演までこなして作られたサイレント・コメディの傑作！
貧民街で暮らす子供達とお転婆娘アンニーが警察官のお父さんを殺した犯人を探すというストーリー！

冒頭の石投げ合戦から楽しく、ピックフォードの魅力爆発です♪
『バビロン』を観た時期だったので舞台裏も想像出来て楽しかった(^^)
当時女性であるピックフォードの活躍と映画の完成度に本当に驚いた😎

映画保存のパイオニアでもあったピックフォードの残した可燃性染色ポジ（米国議会図書館蔵）をもとに、アカデミー・フィルム・アーカイブ（AFA）が2014年に復元し、アンディ・グラッド・バック氏作曲の音楽を収録したＤＣＰでの上映との事でした。

良か映画！

• #2022年劇場鑑賞武味
• #福岡市総合図書館シネラ

冒頭の大人数で繰り広げられる悪童たちによる物を投げ合いながらの迫力あるスペクタクルな喧嘩シーンに心奪われ、30歳を過ぎているのにお転婆な少女を違和感なく演じるメアリー・ピックフォード(もっとも顔はどう見ても大人だけれど)のアイドルみたいな溌剌とした演技が魅力的で楽しく鑑賞できた。ヒロインをめぐるのんびりとした語り口の序盤から警官である父親を殺されたと主人公が仲間が犯人を挙げようとするのを怒涛の勢いで駆けていく後半へと変化していくドラマの構成もなかなか。

いわゆるアイドル映画みたいな構成ではあるが、まだ映画がはじまって20年という状況でドラマのパターンも確立されていないので主人公が暮らすニューヨークの裏町の風景が生々しく捉えられていたりそこで暮らすギャングの生態がリアルに描かれていたりしており熟成どころかもはやワンパターンと化してしまった現代人から見ると新鮮(でもこれは脚本を担当したのが主役であるピックフォードだからやれたのかも)。

ラストは意中の人、兄、主人公がハッピーになるお決まりのパターン。

✔『アンニー可愛や』(3.5p)及び『恋の手ほどき』(3.5p)▶️▶️　

　どんな特集なのか、まず様子見に。驚いた、素晴らしいじゃないか。画質は染色で誤魔化し、最良とは言えないが、充分とも言える本質と力の伝わりはある。ピックフォードは、映画史に残る最も人気と実力を誇った(映画界全体の牽引でも)ひとりだが、可愛さはともかく、全然詳しくない。『アンニー~』は、彼女が映画界で風格を誇った頃の作品で、キャラらも、作品の力も、社会へ投げかける力も、格式や嫌味さなしに真の映画の力を感じ、100年後の今でも、全くそのインパクトは衰えていないのではないか。
　オープンセットの子供ら暴れまくる建屋半壊荒れ地も、ダンスクラブも、開かれてて、汎ゆる、ジェンダーや世代や人種宗教や(反)堅気の差異を、掻き乱し溶解させ、頗る愛おしく思い詰め·開放された地平が自然に導かれる。このラストの晴れやかさに対抗できる今の映画がどれくらいあろう。『雀』の監督で製作年度も近い。
　延々果てなく、抗争というか乱暴決着向いを果てなく続ける、チビッコギャングたち。一方のリーダーの兄は本当のギャング(若輩)を率いてるが、悪どく隠れて卑劣は、その有力子分ら。子供らにも突っつかれる位、たちが悪い。その兄に惹かれてるのが、もう一方のチビッコギャングの女子リーダー。体力·機知·根性·機転は男子以上で、その実兄はギャングリーダーと微妙距離、それは父が厳格で誰にも人望·親しみ厚い警官だからで、ギャングリーダーへも暖かく強く導かんと心通じてる。チビッコらの借金返済の為の演劇会から、男女関係錯綜の若い者らの舞踏会の混乱へ。それを鎮めんとして、少女の父が射殺され、真犯人の罠で仇誤認で、リーダーを撃つ兄。リーダーの手術に、大袈裟に生命捧げるつもりで輸血に身体提供の気の少女(彼と共に、兄を殺人犯にしない為)。立場を越え、囲む人々·観客の胸をストレートに打つ。
　カメラは単独に映像美等に向かう気はなく、回想説明シーンの巧妙な合成·二重焼処理も、よりストレートに事態を伝える為で、正対は少ない着実緩まぬ切返し都度、部位アップ寄り分割対応、パンやティルトの誠実追い、らの絶え間なさが押さえるは、分相応を越えて分不相応な、眼前の者·世界への我が身の投げ打ち、自己よりその夢·その属す世界への、執着と解放への本能·本分の当たり前である。こんなに晴れやかなラストが、あろうか迄に至る。ユダヤ人ラビの家庭も、アイリッシュ警官家庭も、ギリシャ人も黒人も、国の代弁機構内もはみ出しも、親子も年齢越えた執着も、本分を問うほど外見の形と中身は、違いが反比例してく。
---------------------------------------------------
　実年齢以上にあどけなく·アグレッシブ、40年後のピックフォードがL·キャロンという訳でもないだろうが、ルノワールに見出され、アメリカで一大ミュージカルスターになって、評価の落ち着いた頃の作『~手ほどき』。そして円熟期の·牙は収めた頃のミネリ監督作。とかく評判は悪いが、20世紀の終盤に観て、個人的には好きな作(同じアカデミー賞受賞作にして、ヨーロッパ·ｺﾝﾌﾟﾚｯｸｽ作、『巴里のアメリカ人』より好きだ)。スクリーンで観たことはないが素晴らしい味わいだった記憶。
　だだ、今回は前半の1時間強が、焼付·保存もラフな、嘗ての映画館多数併立時代の、場末に遅れて廻って来たような、色も造型も崩れ·剥がれきった状態。しかし、後半はかなり持ち直して、昔の感動にある程度浸れた。ピックフォード26年作に比べ、出てくる場·階層·人種·観念、すっかり閉ざされた後ろ向きの作ではある。欧州の、社交界に係る名所案内、旧くこの後消えてゆくような、(工場等持ってても自らは)優雅で働かない人々が、趣味·体面·誇りの永続の駆引き·何某か解放へ向い絡むを、上下·前後·横へを何重にも組み合せた、のろめも長く優雅なカメラ移動·パンの滋味·ニュアンス含みの変移の押し付けないタッチ主体。縦の構図や、仰角ロー俯瞰め(縦)や·90°変や切返しら目の高さでの角度もしっくり描かれ、実景·美術·装置·衣装の赤·青·白·シルエットの敷き詰めのゴージャスが粘り来る。全てが「恋」主体·芸術的に高められ全ての行動原理のパリ(社交界)に馴染めぬ奥手を、オペラに振り回される母に代わる、祖母·大伯母に社交を訓練されてるヒロインと、生涯独身·目覚め花咲く若い娘追いにときめき続けるその叔父とは違い·全てが退屈でしかない大金持·散財·浮名が社会貢献の大工場主にして常に言動注目有名人。フランクな幼馴染·互いに開放されあう男との間の不変と思われた親しさが、それぞれの祖母と叔父の嘗ての秘められた恋~結婚願望生れ慄き断ち切りと生涯遺るときめきを·再現拡大するような、輝き·変身·そして愛に気付き、その永続しないを乗り越える意志で結ばれてく。
　パリ市内ロケだろうと、豪華社交場だろうと、1人(或いは2人)迷い問い彷徨する場の、造型と突抜け拡がり絶えぬ、延々長廻し長距離移動の妙。それらが届く、街燈越しの青い石畳、白い噴水場バックのシルエット人図、の極り方。