革芸之介

ミニー&モスコウィッツの革芸之介のレビュー・感想・評価

ミニー&モスコウィッツ(1971年製作の映画)
4.3
これは「駐車場」の映画だ。駐車場で始まり、駐車場で働き、ジーナ・ローランズとシーモア・カッセルは駐車場で出会い、駐車場で変なオッサンと殴り合いをしたり、駐車場で素敵なダンスシーンがあり、突如、シーモア・カッセルが逆立ちするグルーヴィーな場面まである。

変化球なのかド直球なのかわからないが、感情爆発度数が過剰気味の恋愛映画。怒り、悲しみ、喜びの視覚化などエモーションを表現させたらカサヴェテスは世界一だ。さらにカサヴェテス監督自らが、いきなりジーナ・ローランズをぶん殴るファンキー過ぎるゲス不倫男を怪演してます。

ジーナ・ローランズはやっぱり美しいし、でっかいサングラスがカッコいい。そしてシーモア・カッセルの存在も素晴らしい。とにかく髭の長さが怪しくて胡散臭い。しかしこの髭は映画の被写体としては圧倒的に正しい。この髭を触りたい、剃ってしまいたいサディスティックな欲求を引き起こす。もちろん本作はそんな私の期待に見事に応えてくれる。まぁ、この髭は剃るには長すぎるので、ハサミで切られてしまう。面白い。こんな髭をハサミで切るシーンだけで、とんでもなく感動的な場面にしてしまう、シーモア・カッセルの演技と呆然と見つめるジーナ・ローランズの顔面アップとカサヴェテスの演出力の手腕は見事だ。

強引すぎる驚愕のハッピーエンドも素晴らしい愛しい傑作。
革芸之介

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