革芸之介

5時から7時までのクレオの革芸之介のレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
4.0
本作はただのオシャレガールズ映画ではない。タイトルやポスターから放たれるオシャレ光線炸裂なサブカル映画ではなく根底には癌や戦争や死など暗い影が見え隠れするのだ。冒頭の有名なカラーのタロット占いシーン、ドアノブを回す手のアップから占い師のおばちゃんの顔面アップに繋がれたとき不穏な空気が充満する。やっぱりアニエス・ヴァルダ凄い。

店で帽子を試着するシーンがとてもポップで鏡を多様した演出、店外からショーウインドー越しに店内を撮ったり、コリーヌ・マルシャンの帽子の選び方が躍動感あって魅力的。

室内描写も素晴らしく、白い部屋の中で動くブランコや揺り椅子、猫もかわいい。部屋に訪れる登場人物たちとのドタバタ喜劇なやり取り、そして何と言っても白い服から黒い服に着替えた時の「白」から「黒」への色彩のイメージ転換場面が見事過ぎる。白い部屋の白の服に唐突に画面に現れる「黒」の色彩。強烈にカッコいい。

街の人々の視線の奇妙な強度。不自然でもあり不穏な視線。タクシー、オープンカー、バスなど車を使って巧みに街の風景を見せる手法も興味深い。
革芸之介

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