革芸之介

パターソンの革芸之介のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.8
今年観た新作映画第1位。年間ベスト。大傑作。もうずっとこの映画のことばかり考えている。

マッチ箱、カップケーキ、車庫のレンガ造りの建物、みんなポップアートみたい。日常を描く表現も多彩だ。毎朝ベッドで2人が目覚めるシーンの様々な変化も面白い。職場に行って、バス運転して、帰宅して、犬の散歩して、バーでビール飲む。これだけで映画は成立する。繰り返しの日常だからこそ逆説的に毎日の微妙な変化も際立つ。映画表現の原点を改めて思い起こさせる。

そして、ただの「いい映画」ではない。序盤は滝の水の流れとマッチ箱、街の風景をオーバーラップさせたり、ちょっとサイケな映像もぶち込んでくるし、少し不穏な空気感も漂う。アダム・ドライバーが職場に徒歩で向かう時、彼の歩く「影」だけが映されるショットが2つぐらいあったり、電気系統のトラブルで停車して動かなくなるバス。バーでのピストル騒動、紙クズになってしまうノート、唐突な永瀬正敏の登場と彼の去っていく時の後ろ姿。なにか根底に死の匂いがある。でも、だからこそ、白紙のノートの持つ無限の可能性に希望の光が見える。

私には詩などを書くことはできないけど毎日twitterで映画や音楽や小説についてダラダラと自分勝手で自己満足なことを書いているが、やっぱり人間は何かを書きたい、誰かに伝えたいという本能を持っているのかもしれない。それと英語を勉強したくなった。英語の詩を原文で語感とリズムを味わいながら読んでみたくなる。
革芸之介

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