革芸之介

家族の肖像の革芸之介のレビュー・感想・評価

家族の肖像(1974年製作の映画)
4.0
老教授のバート・ランカスターおじちゃんなんだけど、かわいいなぁ。すいません、名優にかわいいなんて言ったら失礼かもしれないけど、これは褒め言葉です。

教授を演じるバート・ランカスターが醸し出す「童貞感」。この「童貞感」は精神的な意味でのことで「少年性」みたいな言葉にも言い換えることができる。老教授は美術を愛し絵画の収集と研究に余生を捧げ、クラシック音楽を愛聴し書物に囲まれながら自分の趣味に没頭する高等遊民。とにかく自分の好きなことにずっと夢中のまま人生を駈け抜けてきた生き様は少年がそのまま老成してしまった感じがある。

そしてヘルムート・バーガーを見つめるバート・ランカスターの視線に恋する少年の「童貞感」を想起してしまった。もちろん単純な同性愛などではなくもっと深くて複雑な感情があるのだが、絵画と音楽の趣味を共有できる同志であり、自分の息子のような感情を持ちつつも、ヘルムート・バーガーとシルヴァーナ・マンガーノが熱く激しいキスをしているところを目撃してしまった時のバート・ランカスターの困惑した表情が恋する少年のようだ。

だからバート・ランカスターとヘルムート・バーガーの肉体的な接触が感動を呼び起こす。暴漢に襲われたヘルムート・バーガーを抱えながら隠し部屋に連れていく際の二人の肉体の触れ合い。このシークエンスではヘルムート・バーガーが裸体でシャワー浴びるシーンもあり、おまえはグラビアアイドルかぁ!って思えるほどのサービスカット。

そもそも監督であるヴィスコンティが実生活でも寵愛したヘルムート・バーガーなので本作の老教授はヴィスコンティ自身を投影しているのは明らかであり、愛する人を見守る視線にヴィスコンティの優しさを感じてしまった。
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