ウサミ

ゴッドファーザーのウサミのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.7
「アメリカを信じていました」

映し出されるのは、イタリア系の男。
男は、アメリカの考えを正しいものと信じ、娘にもそう教えて生きていた。しかし、娘が暴漢に襲われたにも関わらず、公正な裁判を受けることができなかったため、その暴漢に復讐をしてほしい、と言う。

それを聞くのは、映画の表紙を飾る男、ドン・コルレオーネ。
涙ながらの男の訴えを、ドンはどこか冷たげに聞いている。

「お礼ならばいくらでも…」

男の提案を、彼はあしらう。
大切なのは、金ではなく、つながりだ、と。

アメリカに迎合することなく、法に縛られることなく、あくまでつながりを尊重し、強固な関係性を作り上げる。
そんなイタリア系の「マフィア」と呼ばれる人々の姿を、どちらかというと高貴で神格化したように描いている本作。

以前観た「グッドフェローズ」と比べると、また違った面白さがありました。


オープニングシークエンスは、コルレオーネ・ファミリーの結婚式の様子が描かれる。
そこで、ファミリーのキャラクターを一通り紹介しながら、話を進めて行くのが面白い。
ここで名前とかゴッチャにならないようにメモとかを取ると、スムーズに映画を楽しめると思います!

式の中で目を引くのは、アメリカの軍服を着て参列する、マイケルの姿である。
彼はマフィアの世界に身を置くことを拒み、アメリカ軍に入隊した。
父であるドンとは反対の性質を持つ彼。

この映画は、父と子の姿を対比させながら、コルレオーネファミリーの栄枯盛衰を描いた映画である。


うーーん、面白い!!
何年かぶりに再鑑賞、2回目の方がはるかに面白かったです。三時間もの間ずーっとのめりこめる映画って珍しいと思います。

冒頭30分で、コルレオーネファミリーの性質を描きます。
ドンであるヴィトーコルレオーネの存在感、周りを囲む"ファミリー"、バイオレンスの香り。一気に世界観に引き込まれます。

強固であるように思えるコルレオーネファミリーも、麻薬の取引を巡ってファミリー間の抗争が起き、ヴィトーが襲撃されてしまう。
精神的支柱を失い、大きくぐらつくコルレオーネファミリー。そんな中、ヴィトーとは対比した存在であるはずのマイケルが、マフィアの人間として目覚めて行く。

映画におけるあらゆるシーンが印象深く、それら1つ1つが深い意味を持っているため、非常に見応えがあった。

様々な試練の中で少しずつ自身の身の周りのことを理解し始め、己のアイデンティティを覚醒させていくマイケルの姿がとにかくカッコいい。
そして、その中でも変わらぬ存在感を放ち続け、いつしか観るものの心の拠り所へとなっているヴィトーも、かなり魅力的な存在だった。

一人の男の目覚めのドラマとして、策略・裏切り・抹殺にまみれたサスペンスフルな世界のドラマとして、そして愛をテーマとしたファミリーのドラマとして、などなど、わずか180分でかなり重厚なものを味合わせてくれる。

ラスト30分にかけては、とにかく鳥肌が止まらなかった。
ゆっくりと時間が流れた中盤とは打って変わって、怒涛の展開が襲う。

暴力の世界に身を埋め、その中で繋がりを守る男の、冷徹なまでの覚悟の形に目が離せない。
ウサミ

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