『容疑者Xの献身』が個人的に激ヤバ映画なので本シリーズには思い入れがなくもないのですが、『真夏の方程式』で完全に裏切られたので、興味の彼方に飛んで行っていました。
22年日本映画を一気見しようと目論んでいるので、久々にガリレオ。
まぁ、前作よりは良かったが前作に似た感想を持ちました。
歌手デビューが決まり、華々しい未来が約束されていた少女の失踪、そして3年の時を経て、彼女は死体で発見される。
容疑者は決定的な証拠を残したのにも関わらず、ただ沈黙を貫き、釈放され、なんと遺族の前に現れる。
「人殺し！」
激昂する遺族を前に、不敵に笑みを浮かべる男。そして…
法の限界に踏み込んだ本作は、北村一輝の名演により深みが生まれています。
が、それは彼の演技に深みがあり素晴らしいのであって、作品そのものは浅くてだいぶおもんなかったです。
舞台と登場人物の輪郭を観客に理解させるのは恐ろしくテンポが良く上手だが、そこから先のキャラドラマが全く深まっていきません。
キャラクターに葛藤、苦悶は無く、「複雑な構造をしたミステリ」に向かって、コマのようにただ動いているだけ。
場当たり的な展開の連続が、今ひとつドラマに深入りするのを妨げます。なので、北村一輝の名演がやや浮いています。
彼の演技が素晴らしいので、彼が演じるキャラクターが疲弊しているのはよく伝わります。でも、脚本が上っ面なので、
「なんでこの人こんなボロボロになってんの？」
と思ってしまいました。
肝心の複雑なミステリーも、正味そんなに美しくないと思いました。
原作がどうなのかは知りませんが、少なくともこの映画においては、知らない情報を小出しにして、ただ複雑に見せているだけのように思えます。事件に関わる人の動きに意志や葛藤が付き纏わないので根本的に脚本として興味が持てないし、細かな部分で全然納得がいかないので、事件そのものが複雑な構造をしていると言うより、杜撰な脚本を断片的に見せることで誤魔化している、とさえ感じました。
最終的なオチも、露骨に不愉快なキャラに全ての悪を押し付け、綺麗にまとめるのは腑に落ちません。
私刑を下すなら。復讐するなら。罪を背負うなら。その覚悟が必要です。
『X』のような、愛という非合理的感情に狂わされ、手を血で染めながらも戦う覚悟を決めた愚かな天才の悲哀はどこにもありません。そしてそれに立ち向かう天才の、男と男の戦いのドラマも、当然無いです。
湯川先生も、全然キャラが立ってないし。ただの、飄々とした頭が良い人。（まぁそもそもそういうキャラなのかもですが）
ガリレオという名前を引っ提げただけの、普通のサスペンス劇場でした。
