ウサミ

大脱走のウサミのレビュー・感想・評価

大脱走(1963年製作の映画)
4.2
名作と呼ばれるだけあって、エンタメ感満載の素晴らしい戦争映画だと感じました。
ドイツに捕虜として収容所に捕らえられた兵士たちが脱走を試みる物語です。
諸々の物資や食料、時には娯楽品まで手に入れる調達屋、脱走後の身分証明書を作る偽造屋、街に溶け込むための服を作る仕立て屋、脱出のためのトンネルを掘るトンネル屋?、などなど… さまざまなプロフェッショナルたちがドイツ軍を欺くため仕事をこなす様は泥臭い「オーシャンズ11」。さまざまな登場人物たちがプロフェッショナルとして活躍する様が心地よく、次第に本格化する脱出への手筈が観ていてとてもワクワクします。しかもこれが実話ベースだというのだからたまげた。

映画は割とライトなエンタメなのですが、扱っているテーマは割と重め。個人的には、掘り下げようと思えばもっとドラマを掘り下げられそうな予感がしたが、思ったよりライトに描かれているゆえに、やや肩透かしを食らった気も。
昔の映画なので、あれくらいの塩梅がちょうど良いのかもしれませんが、今同テーマを本格的に描くなら、もっとシックで、ズンと来るような暗い作品になっていたかも。個人的にはそっちの方が観てみたい気持ちがありますね。

条約により敵国の兵士であっても、違和感を抱くくらいの厚遇。『ラーゲリより愛を込めて』とかの凄惨な感じを見ると、最初は背景が掴めずややビックリしました。
正直あそこで悠々と暮らすの悪くないなというモヤシ根性で観ていたのですが、やはり彼らは兵士。敵国の配下でぬくぬく暮らすなどという選択肢はハナから無く、誇りと威信をかけて脱出を目論みます。
脱出という形で戦った兵士たち、そしてまだまだ戦いは続くことを予感させるエンド。「彼らは誇りを持って戦い続けたのだ!!」というヒロイズムを感じる映画であり、きっとアメリカ人やイギリス人のモチベーションムービーになっていたんだろうな、と予想しました。

やはり日本人としては戦争映画のバックボーン対してはややシンミリしてしまうので、これだけカラッと戦争映画を描くことそのものにあまり融和性が無い気もします。
シンプルなエンタメとして観るが吉で、深みを求めると肩透かしを喰らう気も。

マクイーンのバイクシーンのワクワクする迫力。
身体のくねりが幼い頃にみた「タンタンの冒険」そのもので童心が蘇りました。
ウサミ

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